新型コロナウイルスの影響で急遽取り入れた企業も多い「テレワーク」。普段は日中不在のパートナーが家にいることが、家族の生活リズムに良くも悪くも影響し、ストレスを募らせることがあるという。阪神・淡路大震災で被災した人の心のケアに詳しい精神科医、松井律子さん(神戸市東灘区)への取材を元に、ストレスのコントロールについてQ&A形式でまとめた。
-コロナうつ、コロナ疲れとの言い方を聞きます
「パニック障害やうつ病などの持病があり、不安が強い傾向の人には、そう呼ぶ人もいます。でも、言葉が一人歩きすると、不安が強まりかねません。『世界中誰でも不安になったり憂鬱になったりしていますよね』と返しています」
-夫の在宅勤務が、妻に思わぬストレスが招いているとも
「もちろん『家事を手伝ってくれる』『一緒に過ごせる』という長所はあります。でも、いつもと違って一日中夫が家にいることで、普段在宅の妻は、自分の空間や時間が阻害されていると感じやすくなります」
「定刻出勤し、会社の自分の席で仕事をすることが、アイデンティティの確立になっていますが、在宅勤務では切り替えが難しい。狭い家には居場所もなく、常時お互いの気配が感じられ、仕事に集中しにくい。今後の経済的不安もあります。今まで見ないことにしてきた家族内の葛藤やなんとなくやり過ごしてきた夫婦関係のきしみが、ここに来てあらわになってしまう家庭もあります」
-子どもへの影響は
「子どもは『大人の鏡』と言われ、大人の不安や苛立ちに敏感に反応します。大人にうるさく干渉されても、外に行けないし友達とも遊びにくい。勢いゲームやネットに向かってしまい、大人が叱責するという悪循環です。成長期だと体を動かせないことも相当のストレスになります」
-ストレスをコントロールするには
「落ち着きを取り戻すには、できる限り普段通りの生活を維持すること。人は変化を求めますが、それはいつもの生活が持続していることが前提。同じ時刻に、同じ場所で、いつもの行動をする。それで安心を得ています。いつも通りの散歩や体操、いつも見ているテレビ番組を楽しむなど日課を続けてください。
「友達や親族とやり取りすること。愚痴の言い合い嘆きあいでもかまいません。それでストレスは幾分和らぐはずです。人は一人では弱いですが、誰かと一緒だと案外頑張れるものですよ」
-気をつけることは
「感染の急拡大を防ぐため、大勢で集まることを控え、咳エチケットや手洗いを続けることに尽きます。みんなが落ち着いて生活していれば、大勢の患者さんが押しかけて医療機関が疲弊し、機能しなくなることを回避できます。これから増える重症の患者さんの治療につながります」
松井さんは「はあとけあ」と題したミニコミ紙を発行しています。3月号の内容は「あふれる情報から有効な対策を読み取る」と題してうわさに振り回されない対応をまとめています。HPでも閲覧できます。
▼まつい心療クリニック 公式サイト http://www.matui-heartcare.jp/