新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、各地で卒業式が中止されたり規模の縮小が余儀なくされたりする中、奈良市の県道沿いに先週末の14日、卒業証書に似せ、卒業生へのメッセージを記した地元企業有志からのお祝いの横断幕が掲げられました。
幕はテントなどに使われるターポリン生地で、たて90㎝、よこ135㎝。屋外広告などを手掛ける三岡商事(同市神殿町)のフェンスに取り付けられています。発案した同社の三岡祥之さんは「本来の形での卒業式ができないと聞き、子どもさんや親御さんはどれほど悲しく辛いだろうと。せっかく屋外広告の仕事をしているし、自分のできることで、せめて地元の大人たちが町ぐるみで卒業生を応援しているよ!と伝えられたら、と思った」といい、今月9日ごろ、青年会議所の仲間だった3人に声を掛けたといいます。
eスポーツを扱うタヂカラ(同市)の上田良太さんは、高校3年と中学3年の息子がともに卒業式でしたが、高校は卒業生と教職員のみ、中学は保護者も参加できたものの時間は大幅に短縮されたといいます。「男の子なんで、さほど落ち込む様子は見せなかったですけど…。その後に予定していたクラスの友達との食事会も延期になったそうです。本当なら一番晴れやかな気分になるところを…やっぱり、かわいそうですよね」と話します。
当初は普通の横断幕も考えましたが、「せっかくならインパクトのあるものを」と卒業証書風のスタイルに。その日のうちに、それぞれの思いを原稿にし、翌日には校正作業を終え、わずか2日で完成させたそう。「人生は一期一会です」と記した堀田電工(同市)の堀田英一さんは「自分のモットー。こんな状況ですが、道を選んでいくのは自分自身。目標を持ち、『人生を楽しんで欲しい』という思いを込めました」と言います。
ツイッターやインスタグラムで紹介したところ「これまでにない反響がありました」と、建築設計のアークスデザインラボ(同市)の津布久伊左男さん。新型コロナの影響で奈良も観光客が激減するなど大きな影響を受けていますが、「奈良の子たちはもちろん、全国の卒業生へも『応援しているよ』というメッセージを届けられたらうれしい」と話していました。