伝説的プロデューサー・奥山和由は韓国映画『パラサイト』の受賞をどう見たか

石井 隼人 石井 隼人
奥山和由プロデューサー
奥山和由プロデューサー

日本国内の“権威”ある映画祭の多さにも疑問を呈する。「僕が関係している京都国際映画祭も含めて、日本には様々な映画祭があります。お金を出してくれる人がいて、お祭り的に開くのであればいいのだけれど、ほとんどの国内の映画祭が自分たちは権威のある賞なんだと高いところから賞を授けることだけに邁進している。それでは新しい才能も生まれない」。

日本の映画作りの方式も、新しい才能を生み出しにくい状況を作っているようだ。「とある監督は、映画会社にオリジナルの企画を出そうとしたら『原作モノでなければ製作委員会を組めないし、リスクも分散できないからダメ』と断言されたそうです。それだと映画にする必要のない原作モノや人気アイドルを起用した映画ばかりが増えていく。利益が生まれるのは悪い事ではないけれど、アイドルのご機嫌を伺い、原作者も納得するような映画を撮らなければいけない中で、映画で己を解放したい!という気持ちを持つ人はなかなか出てこない」と警鐘を鳴らす。

そんな風潮のせいか「映画ではなくて“映画監督”というイスに憧れている人たちが多い」と寂しそうな奥山氏だが「三島有紀子監督の『RED』からは、映画に惚れて映画を作っているという気持ちが伝わってきました。映画としての演出をしっかりしている。映画に惚れて映画を作っている人間が少ない昨今にあって珍しい逸材」とプロデューサーとして対面する日を楽しみにしている。

現在最も集中して取り組んでいる企画は、映画『竜二』の監督であり主演を務めた金子正次さんの遺稿脚本『盆踊り』の映画化。『全裸監督』の武正晴監督がメガフォンを取る予定だ。「映画とは精子と卵子が合体して自然に生まれてくる生命体のようなもので、運命的です。僕も運命を感じ取って本能で映画を作りたいと思う。大林監督の『海辺の映画館-キネマの玉手箱』もまさに本能的作品。映画は恐ろしい生き物ですから、本能でやらないとダメなんです」。これからもより一層、映画という魔物に向き合っていく。世界を驚かせるものを生み出すために。

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