「偽札が流行っているので確認したい」なんて電話は…詐欺! 早めの「新紙幣発表」で事件増加中、警戒を

多田 文明 多田 文明

令和元年の特殊詐欺の被害が、警察庁から発表されました。一昨年よりも、件数、被害額とも減っていますが、それでも件数は1万6836件、301億5000万円の大きな被害額が出ています。今も被害が多発している理由には、手口のバリエーションが増えてきていることがあるでしょう。今回は、そのひとつである「ニセサツ(偽札)」を切り取ってみます。

平成から令和に変わる時期に、麻生財務大臣が新紙幣の発行を、2024年をめどに行うと発表しました。その理由のひとつに偽造防止のためという理由がありました。元号が変わる状況に合わせてタイミングよく発表したのでしょうが、この話を聞いて詐欺犯らが利用しそうな「偽札」という題材を、早期に与えてしまったなと感じました。

実際に、昨年末から偽札絡みの事件が続発しています。80代女性のともに、警察官を装った男から「偽札を作っていたグループを逮捕したら、あなたの口座名義のキャッシュカードが出てきました。これまでに引き出したお金に、偽札が混じっている可能性があるので、お札の番号を調べさせてください」と電話があり、家を訪れてきた偽の警察官に、お金を渡してしまいました。その額は4800万円ほどにのぼっています。

埼玉県では80代女性が警察官をかたった男から「詐欺犯を捕まえたら、その男があなたの通帳を持っていました」と慌てさせられて「偽札が流行っているので確認したい」との理由をつけられて、600万を渡しています。また70代女性も、同様な手口で2500万円をだましとられています。どうしても偽札絡みの詐欺では、手持ちのお札をすべて渡してしまいがちで、被害が高額になる傾向があります。

昨年よりアポ電強盗が多発していますが、「偽札」絡みの手口は、ここにも利用されています。今年2月、高齢男性の住む家に男が押し入りナイフを突きつけて、金を要求する強盗事件が発生しました。しかし、同居していた息子らに抵抗されてもみ合いになり、犯人は何も取らずに逃げましたが、実は、その前日に警察をかたって資産状況を聞き出す電話があったのです。しかも、その時の内容が「偽札」絡みでした。

警察をかたり「偽札の犯人を捕まえたので、その捜査をしています」と電話をかけてきて、紙幣の確認をしたいとの理由で「今、手元にある1万円札に書かれた番号を教えてください」と言ってきました。そして高齢男性は、その番号を読み上げたそうです。実は、相手の資産状況を尋ねるのに、「偽札」は格好の材料なのです。お札の番号を読み上げさせながら、家に何枚のお札があるかを聞き出しやすくなるからです。

確かに、今は詐欺事件などが多く、事件に巻き込まれたと思うと、どうしても相手の話にのってしまいがちですが、まずは身元を確認することから始めてください。しかも、犯行は最初の電話をかけてきてから短時間で行われます。なかなか冷静になる暇がないかもしれませんが、どこかのタイミングで誰かに相談するという姿勢を持つようにしてください。思いのほか早く新紙幣発行が明言されてしまったので、「偽札がある」という手口は、今後も起こり続ける恐れがありますので、十分に警戒する必要があります。

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