「落ちてくるナイフは…」「上り百日、下げ三日」 株式相場、次の一手を相場格言で考える

山本 学 山本 学
相場の格言に「落ちてくるナイフはつかむな」がある(taa22/stock.adobe.com)
相場の格言に「落ちてくるナイフはつかむな」がある(taa22/stock.adobe.com)

 東京で兜町の記者だったとき、大手証券の役員も務めたベテランの市場関係者が「相場は経験と知識だ」と話していたのを思い出す。大幅に下落した最近の株式相場を見ていると、確かにそうかもしれない。「上り百日、下げ三日」という相場格言がある。上げ相場は緩やかでも下げ相場は動きが速いという意味だが、実際その通りの展開だ。しかも偶然にも、日経平均株価は2月28日までの4日間に、昨年10月~今年1月のおよそ120日分の値上がり分を帳消しにしたと思えば、だいたい計算が合うように見える。

 大阪に米相場ができた江戸時代からの、膨大な経験と知識を短いフレーズに詰め込んだのが相場格言だ。多くは出所不明だが、いまでも市場関係者の間では口伝で残っていたり、それをまとめた書籍もあったりする。先行きが見通せない、こんなときだからこそ相場格言で先人の教えを振り返り、株式市場で「次の一手」を繰り出す際の参考にしたい。

 まずは心構えから。「連日の続く相場に逆らうな」「落ちてくるナイフはつかむな」というのがある。短期的に振り返ると日経平均は2万4000円の節目をうかがう展開が、しばらく続いていた。個別銘柄では、少し高くて手を出せないなと思われた銘柄が少なくなかったが、足元の下落で値ごろ感が出てきたことだろう。だが、ここであせって買いを入れないよう戒めるのが、これらの相場格言だ。改めて買うなら、株価の底を確認してからでも遅くない。現在の株価だけ見て買いを入れる「値惚(ぼ)れ買い」は、損を招くことが多いということらしい。

 さらに「売りは早かれ、買いは遅かれ」というのもある。その理由は冒頭の「上り百日、下げ三日」だからだろう。上げ相場は緩やかなので、あわてて買う必要もない。一方で、配当金ねらいや長期的な資産形成とは別に、短期的な売買のつもりで買った銘柄なら、含み損を拡大させないために素早く売却するべき、と受け止めればよいだろう。逃げ足は速いに越したことはない。相場が下落局面のいまなら、なおさらだ。

 「利食い千人力」「利食いはいつも正しい」という格言もある。後者は米ウォール街の相場格言で、おおむね日米ともに同じことを言っている。もう少し利益を乗せて売りたいと思った銘柄でも、上がるのを待っていると下げ始めたりするものだ。どうせ相場の頂上の一番高い局面や、谷底の最も安い場面は見通せないので、「アタマとシッポはくれてやれ」。昨年初めに買いを入れて、まだ利が乗っている銘柄の利益を確定する、いい機会かもしれない。

 では、相場はどのあたりまで下落するのだろうか。下値のめどを示す相場格言で、よく知られているのは「半値八掛け二割引き」だろう。言い換えると、下げは思いのほか大きくなるので気をつけよう、という意味だ。たとえば半値まで下げるなら、日経平均なら1万2000円程度。その8掛け(その80%)なら9600円程度で、さらに2割引き(その80%)なら7680円近辺になる。もとより相場格言は個別銘柄の動きを意識しているだろうし、さすがに日経平均が一気に7000円台まで下落するとは考えにくい。このまま世界的に景気が悪化するのか見通しづらいとはいえ、相場が下落することを考えるなら「行き過ぎもまた相場」も含めて考えて、数年内に1万2000円近辺までの下落も意識しておくべき、ということかもしれない。

 ところで、こんな下げ相場はいつまで続くのか。「大回り三年、小回り三月」というから、3カ月もすれば少しは周囲が見渡せるようになるのかもしれない。梅雨どきぐらいになれば、民主党の候補者選びが混戦している米大統領選も方向性が見えてきそうだし、それこそ新型コロナウイルスの懸念も落ち着いていると期待したい。それまでには、じっくりと作戦を立てたり、態勢を立て直したりできるだろう。次の一手が固まるまで、「休むも相場」という格言もある。

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