雨の中ひとりぼっちで鳴いていた子猫 今では家族の中心的存在に

岡部 充代 岡部 充代

 ある雨の夜、びしょ濡れで鳴いていた1匹の子猫が保護されました。2018年11月末のことです。キジトラで、まりもみたいに丸っこかったことから、保護主さんに「きじもちゃん」と名付けられたその子は、実は4きょうだいでした。

 

 母猫が4匹の赤ちゃんを集合住宅のベランダで産み、うち3匹は地域のボランティアさんに保護されたのですが、きじもちゃんだけ捕まらず。その後、母猫と、そのまた母猫…きじもちゃんたちのおばあちゃんは、別のボランティアさんにTNR(T=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻す)のため捕獲されました。

 つまり、この時点できじもちゃんはひとりぼっちになってしまったわけです。そして、母猫とおばあちゃん猫が捕獲された翌日の夜、雨に濡れて鳴いているのに気付いたボランティアさんが、捕獲器の後ろに母猫が入っていたカゴを置いて誘導し、保護したのでした。

 お母さんとおばあちゃんは避妊手術のため病院に泊まっていて、まだ帰って来ていませんでした。大雨の中、きじもちゃんは心細くて鳴いていたのでしょう。お母さんのにおいがする方へと歩いて行き、捕獲器に入ったことを思うと切ないですが、シャンプーとノミ取りが終わると、勢いよくごはんを食べたと言いますから、きっとお腹もすいていたはず。温かい人の手に抱かれて、安心したに違いありません。

 

 こうして無事に保護されたきじもちゃんは、12月に開催された『もふもふ西宮』主催の譲渡会で里親さんと出会い、今は兵庫・西宮市で幸せに暮らしています。

 家族になってくれたのは山藤(やまとう)さんご一家。6年前にチワワのモカ君を亡くし、「次は猫かな」「飼うなら保護猫だよね」と家族で話していたところでした。

「マンションの立体駐車場で猫の鳴き声がしたんです。保護できたら飼いたいくらいだったんですけど、構造上、声のする方には入って行けなくて。その子がどうなったか分かりませんが、生まれてきても幸せになれない猫がいることをリアルに感じた出来事でした。そのことが頭に引っ掛かっていて、迎えるなら保護猫をと話したんですよね」

 ご主人の輝久さんが当時の気持ちを教えてくれました。

 

 『もふもふ西宮』のブログを見て最初にきじもちゃんに目を留めたのは、奥様の有加さんでした。ひかれた理由は「目がキレイだったから」。譲渡会当日は行けなかったため、ご主人と娘の寧々ちゃんに「この子を見て来て!」とお願い。実際に対面した寧々ちゃんも、きじもちゃんをひと目で気に入り、「この子にする!」となりました。「顔がまん丸でかわいかったのと、目がキレイだったので」と寧々ちゃん。やはり目が決め手だったようです。3人で新しい名前を考え、今は「マフちゃん」としてかわいがられています。

 マフちゃんのお気に入りの場所は寧々ちゃんの膝の上。捕まえるのには少し苦労するようですが、一度抱っこされると下りようとしません。取材中もずっと寧々ちゃんの膝の上にいました。

 

 「マフが中心にいて家族が回っている感じです。みんながマフにデレデレになっていますね(笑)。家の中の雰囲気がギスギスすることもないですし、マフの存在は大きいです」(輝久さん)

 雨の中、ひとりぼっちで鳴いていた小さな子猫が、家族をひとつにする大きな、大きな存在になっています。

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