銅鏡?…いいえ、コンパクトミラーです! 東京国立博物館「出雲と大和」展の古代グッズがリアル過ぎる

山本 明 山本 明

東京国立博物館で、日本書紀成立1300年・特別展「出雲と大和」が開催中です。現代の島根と奈良の地に当たる二つの国は、古代日本の「幽」と「顕」を象徴する場所でもありました。本展には両県の貴重な発掘品が集結し、歴史ファンの訪れを待っています。また、フェリシモ(神戸)と同館がコラボしたグッズも、古代好きの琴線に触れそうです。銅鏡そのもののようなコンパクトミラー、耳元でキラリと主張する銅鐸や勾玉を模したイヤアクセサリー…古代を再現しつつ、じゅうぶん現代的でもあるグッズ制作のこだわりについて聞きました。

同展覧会グッズのデザイン、制作を担当したのは社内の公認部活で「お寺の文化から心豊かな暮らしのヒントを探す」ことをモットーに活動する「フェリシモおてらぶ」。同部は2014年の結成以来、前述の思いを込めた様々な商品を世に送り出してきました。さらに2016年頃から、毎年いくつもの仏像企画展グッズの制作も担当してきたといいます。今回は「出雲と大和」という、日本の国づくりを語るうえで貴重な企画展であるという内容に惹かれて仕事をお受けした、と同部部長の内村彰さん。さらに自身が堺市出身で、幼少時から古墳が身近な存在であったこともこの仕事に、運命的なご縁を感じたのだ、ともいいます。

   ◇   ◇

―一番最初にアイデアが浮かんだアイテムは。

内村さん「コフニカルイヤアクセサリーです。わたしは子どもの頃から埴輪や青銅器などの模造をよく目にしたり、学生時代の社会科見学で実際に大山古墳の周りに行くこともありました。当時から、古墳時代のその不思議なデザインに心惹かれていたのですが、その思いが急に蘇りまして、これはグッズにするしかないと思いました」

「まずイメージできたのは銅鐸、勾玉です。それらはフォルムも独特で、アクセサリーに向いていると感じましたが、どうしても銅鏡をグッズにしたくていろいろ考えました。考えた結果、もうそのままコンパクトミラーにしてしまおう!と」

―それで「画文帯神獣鏡刺繍缶ミラー」ができたのですね。

「あの特徴的彫りや繊細な造形をお伝えするのにはプリントだけでは足りないと思い、手法を探っていきました。実際に型を取って、プラ素材などで表現するのもよいですが、おもちゃっぽくなるのが想像できますし、コンパクトミラーというアイテムなので女性が持ちにくいものになるのでは、と感じました」

「いろいろなメーカーさんと相談していたときに、刺繍表現に強いメーカーさんが興味を持ってくださり『刺繍を施して立体的した上から、さらにリアルプリントを重ねることで再現度を高める、という方向でやってみよう!』と企画がスタートしました」

―銅鏡の持つ神秘的な雰囲気も感じられる仕上がりです。

「銅鏡、いいですよね!終わりのない円環をあらわす形状に、神や獣をデザインした、当時の人たちのことを考えるとロマンを感じますね。デザインに関してはメーカーさんとのファーストサンプルの段階で、特に刺繍でひび割れの段差まで表現できていたのには驚きでした」

―そのままスムーズに制作は進んだのでしょうか。

「でもまったく問題がなかったわけではなく、ミラー側面の表現には少し苦労もしました。といいますのも、本物の神獣鏡の側面と、刺繍缶ミラーの側面は形状が全く違いますので…最終的に黒いラインを側面に入れて神獣鏡を浮かび上がらせるような表現に落ち着きました」

―リアルかつ、普段使いもできるコンパクトミラーに仕上がった、と。

「これは今回のアイテムに限ったことではありませんが、わたしも含めてニッチな『好き』の世界を持つ人たちが、それを身に着けることで、ご自身の好む世界観をちょこっとアピールできるものを作りたいという思いがあります」

「古代好きの人はぜひ普段から、今回のグッズを身に着けたり使ったりしていただくことで、同じ趣味の人に出会ったときは『それってもしかして!』と意気投合したり、逆に興味のない人が見たときでも『それ、おしゃれだね!』という会話が始まったり。そんなシーンが生まれるきっかけになってくれれば、うれしいですね」

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