外出時に突然、我慢できない便意を催した時、トイレを使用できるコンビニエンスストアほどありがたい存在はない。ただ、無料とはいえ、トイレを使わせてもらったお礼に商品を買うべきかどうか、特に買う物がないけど…などと考えてしまう人も少なくないだろう。流通アナリストの渡辺広明氏が「コンビニのトイレ」について、現場の経費や人件費など実情を紹介し、今後に向けて提言した。
◇ ◇ ◇
外出時にトイレを我慢できなくなった時、コンビニのトイレには「後光」が差して見えます。特に小さい子供が唐突にトイレを言い出す時には本当にありがたいものです。
逆に、貸してくれなかった時は、コンビニ側が必ず貸す必要がないのにも関わらず、理不尽にもそのコンビニを恨んでしまったりもします。小売業や飲食業にとっては、トイレは売上・利益を直接は生まないサービスで、店側には経費だけが発生します。滞在時間が短いコンビニでは特に顕著です。
TBS系「グッとラック!」の企画でスタッフの方と先日コンビニトイレを深掘りし、1回利用するとどれくらいの経費が発生するのか計算してみました。
トイレには水道代、電気代、トイレットペーパー、トイレ洗剤、清掃の人件費などが掛かります。1店舗で1日40人が利用し、時給1000円の前提で概算してみると、6回清掃の場合は約30円/回、1回も清掃しない場合は約6円/回となりました。
フランチャイズオーナーの利益が100円の商品につき10〜15円とすると、トイレ清掃回数にもよりますが、トイレを使用した際に100円ぐらいの商品を最低買ってもらえれば、今後の利用の宣伝とも考え併せて、店舗側にとっても許容範囲となります。
番組がトイレ利用者100人を調査した結果、64人が商品を買っているようでした。トイレを使わせてもらった「お礼」にということが大半だと思いますが、コンビニによく貼られている「トイレを使用する場合は店員に一声お掛けください」のポスター掲出も、購買心理を後押ししていると思います。
嘔吐(おうと)の飛び散りや、トイレの詰まりなどのイレギュラー清掃は、店員に過度なストレスが溜まります。パリの公衆トイレは1人用で使用後にボタンを押すとトイレ内全てが洗浄されます。トイレ清掃の人件費や店員のストレスを考えると、毎回洗浄する必要はないですが、店員がボタンを押すだけで洗浄されるトイレの開発が待ち望まれます。
また、コンビニのトイレは、事実上、公衆トイレの役割を果たしています。正式な公衆トイレとして自治体が使用料などをコンビニに支払うという選択肢も必要かもしれません。
コンビニでトイレを使う時は、「当たり前」ではなく、「感謝の気持ち」を忘れないで欲しいと痛切に思います。