昭和の思い出家電・黒電話の「ダイヤル」部分がカプセルトイに…回す感触・戻る音に癒やされる

川上 隆宏 川上 隆宏

何これ…。思わず絶句してしまう、不思議なカプセルトイがSNSで話題です。数字の書かれたダイヤル…もしかして回せるのかしら。っていうか、何かの一部だったのかしら。回すと何が起きるの?楽しいの?

昭和の時代よく見られた家電のひとつ・ダイヤル式の「黒電話」。そのダイヤル部分「だけ」をフィーチャーしてしまった「黒電話の感触」というカプセルトイです。エポック社から昨年12月に発売されました。少しずつデザインを変えた3種類の黒電話と、赤色の電話の4種類がそろいます。

ダイヤルは実際に回すことができ、いわゆるダイヤルを回す時のひっかかる感触と、ダイヤルが戻る時の「ジー」という音が再現されているといいます。しかし、それだけのおもちゃです。回したからといって、Bluetoothでスマホと接続して「何かができる」とかではありません!

にもかかわらず、SNSには黒電話のことを知っている昭和な人たちから「懐かしい」「ふと祖父母の家の番号を回した。指が覚えている」といったセピア色の思い出が続々と。黒電話のことを知らなくても、ダイヤルの感触と音のとりこになる人が多いようで「永遠に回したくなる」「ハンドスピナーに近い中毒性と安心感がある」「心を穏やかにしたい時、虚無的な気分のお供に最高であります」といった声も寄せられています。

確かに、だまされたと思って、何回か回していると、だんだん許せるようになってきたというか、すこしうっとりしてきたような。…はっ、いけないいけない!

どうしてこんなインパクトある商品をつくってしまったのか。エポック社の担当者に聞きました。

   ◇   ◇

―つくったきっかけは何だったのでしょうか…。

「昭和テイストなデザインやレトロな家電などがモチーフになった商品が話題になっているので、今ではほぼ見ることがないダイヤル式の電話をモチーフにした商品を企画しました。ダイヤル式の電話に触ったことない世代にとっては、使い方や感触も分からないという人もいらっしゃるようなので、逆に新しく見えて興味を持ってもらえるかと考えました」

―そういえば商品の対象年齢が「15歳以上」になっているのですが…。それは15歳以上の大人でないと、黒電話のことも分からないし、楽しめないとの判断からでしょうか…。

「いえ、そういうわけではありません。基本的に、お子様を対象とするおもちゃには「STマーク」(ST=Safety Toy)の取得が必要となります。今回は、こちらの取得は必要ではない商品と判断したため、表記上15歳以上とさせていただいております」

―あ、そういう理由なら、ほっとしました。ちなみに、つくられる上で、特にこだわったところはありますか。

「ダイヤルを動かしているゼンマイ部分です。記憶の中にある黒電話のダイヤルの感触や音の感じをできるだけ再現するために、何種類ものゼンマイを集めて試作しました。本物の黒電話の感触や、音、戻るスピードに近いものを選び抜いています。商品化まで10個以上の試作を経ています」

―こちらの商品、どれくらい人気がありますか。

「売れ行きは順調です。発売のタイミングにて、公式ツイッターにて紹介動画を出しましたが、お客様からの反応もかなり好感触でした」

―でも、個人的に購入してみましたが、回す時の音はリアルでしたが、戻す時の音はちょっと軽い感じがしました…。

「そうですか…やはり黒電話世代で…?」

―ううっ…年齢は恥ずかしいので、それは秘密です!

「そうですね…。やはりリアル黒電話を知っている方にとっては、もう一歩、『本物』には届かなかったのかなと、SNSのお客様の声から感じることもあります。ただ、音の部分を含め見た目・サイズについては、規定のカプセルにおさめなければならないため、どうしても制限が多く、リアルへの追求とのジレンマで苦労した部分ではあります。音についても同様で、コスト・サイズに見合うゼンマイの中から最適解を選んだものの、本物とのギャップは生じてしまっていたのかなと」

―なるほど。

「これについては、おもちゃとして『デフォルメ』されているものでもあり、『あともう一歩なのになぁ』という部分も、反対に魅力として楽しんでいただければと思っております」

「なんと言っても、それと同じかそれ以上に面白いとのお声をいただいていることも確かですので、安心してください!!」

   ◇   ◇

楽しい遊び方はありますか?と聞いたところ、「こちらとしては、もう何も考えずに、無心で、回していただければ本望です」とのお返事でした。同社ではほかにも、「ラジカセ」「CDラジカセ」などを模したカプセルトイをつくっているそう。こちらも、何をどうやって遊ぶのか、とても気になります…。

なお、この原稿も制約あるリソースの中で書かれています。『あともう一歩なのになぁ』という部分も、反対に魅力として楽しんでいただければと思っております(あれ?もしかして全然冗談になっていないかも…)。

※価格は1回300円(税込)。ただし、販売を終了していることがあります。「カプセルトイという商品の特性上、流動性が激しく、いつ店頭からなくなるか分からず、販売場所についても案内は難しい」(担当者)のだそうです。

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