人気商品に3時間並びも!?「焼き芋の祭典」今年も品川で開催 スイーツ化と健康志向で若い女性に支持

北村 泰介 北村 泰介

 高層ビルに囲まれた広場で焼き芋にかぶりついた。2月2日まで開催中の「品川やきいもテラス2020」。2017年から今年で4回目となり、昨年は7日間で過去最多の5万8000人を動員した。今年は6万人の来場者を目標に、全国から過去最多となる16の焼き芋店が参加。最長3時間待ちの行列もできるという同イベントで、にぎわいのピークとなる土日の2月1~2日を前に人気の要因を探った。

 初日の27日、オープンから約2時間で完売したのが「華むらさき」(税込500円)。紫芋と言えば沖縄のイメージだが、こちらは品種改良された茨城県産。ほおばると、ネットリとして、自然の甘みが濃厚だ。味の奥行きが、深い。まさに「ディープ・パープル」と名付けたくなる味わいだった。

 昨年に続く2度目の出店となる同県かすみがうら市の「蔵出し焼き芋 かいつか」が販売。一番人気の華むらさきは初日の午後1時頃に完売した。運営する株式会社「ポテトかいつか」のマーケティング開発部・林清一部長に話を聞いた。同社は、さつま芋の専門商社で、同市内の本社横には焼き芋の直営店があり、約10年間にわたって販売。現在、茨城県内で4店舗、千葉・流山市で1店舗を展開し、ネット通販も行っている。

 林さんは「従来の紫芋はホクホクしたもので、甘さが足りなかった。華むらさきは最高糖度が40度くらい。ネットリした品種が開発されてから売り上げが増えました。初日も午前中から並ばれた方は若い女性が中心でした」と語る。週末を前に「(前回の)土日は数百人の行列が出きました」と林さん。この土日(いずれも午前10時オープン)も早めに来場した方がよさそうだ。

 茨城県産のブランド芋「旭甘十郎(あさひかんじゅうろう)」を提供する「焼き芋専門店 芋やす」(同県土浦市)も出店。専用の肥料を使 って育てられた「紅はるか」「シルクスイート」の中から、「旭甘十郎」になる芋を厳選し、熟成させて甘みを引き出している。人気の「旭甘十郎 紅はるか」(同600円)を食べた。一見、オーソドックスな色合いだが、しっとりとした優しい舌触りで、素朴な大地の甘みが口の中に広がる。

 中山幹郎店長は「軽トラックでの移動販売から始まって約10年になります。昨年8月に店舗を建てました。イベントには最初から4回目の参加です」と紹介。「天然のスイートポテトというスイーツ感覚で食べられる。(購買層は)若い方が多いですね」と語った。

 イベント主催者であるNTT都市開発株式会社の堀尾美月さんは当サイトの取材に対し、「つい最近までは軽トラックの移動販売がメインだったと思いますが、専門店が登場し、焼き芋だけでなく関連スイーツやフードも出てきて、いろんな楽しみ方が増えている。それを1か所で一度に楽しんでいただければ」と開催の意図を説明。「(来場者は)8割がた女性ですが、お子様連れのご家族、女子高生、カップルと幅広い年代の方に来ていただいています」という。

 会場には長蛇の行列もできていた。堀尾さんは「行列は日にもよりますが、最長3時間並ぶところもあります」と明かした。ちなみに最寄りの品川駅から新幹線「のぞみ」に乗れば、岡山駅に着いてしまうほどの時間だ。

 人気の理由を聞いた。堀尾さんは「野菜本来の甘み、砂糖を使っていない甘みが女性にウケていると思います。ポタージュ、クレープなど、それを使ったスイーツやフードが無理のない甘さでおいしく、また、繊維質で健康にもお通じにもいいので」と分析。さらに「しっとり系が増えたことも女性人気のきっかけになったと思います」と、ホクホク系からスイートポテト系への変遷も要因とした。

 堀尾さんは「オフィス街でもある品川にあまり来ることがなかった人にも、これをきっかけに来ていただければ。」とアピールした。

 個人的に、菓子を「スイーツ」と呼ぶことに違和感を感じてきた記者のような価値観をよそに、焼き芋も本格的に「スイーツ化時代」へと突入している。

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