またゴッホ展!?なぜ日本人はゴッホが好きなのか…東京で45万人を動員、炎の巨匠の展覧会が神戸で開催

山本 明 山本 明

「またゴッホ展!?」…そんな声が聞こえてきそうです。近年立て続けに国内で大規模展覧会が開かれている、巨匠フィンセント・ファン・ゴッホ。特に、東京・上野では2016年より本年までに3回、展覧が開かれ、延べ約122万人を動員しました。直近の展覧会である今回の「ゴッホ展」は2019年10月11日~2020年1月13日まで「上野の森美術館」で開催され、総入場者数は約45万人に。その巡回展がいよいよ1月25日より、兵庫・神戸にある「兵庫県立美術館」で開幕します。これだけ多くの人が足を運んででも「見たい」と思わせるゴッホという画家の魅力とは何なのでしょうか。その一端に触れるため、24日に同館で行われた内覧会に行ってきました。

近年ますます、その人気度を増しているように思われるオランダの生んだ天才画家ゴッホ。東京・上野では、2016~2017年に約2カ月間同居するもゴッホの『耳切り事件』で破局を迎える2人の巨匠の作品が一堂に会した「ゴッホとゴーギャン展」(東京都美術館/約40万人を動員)が、翌2017~2018年には、日本初のファン・ゴッホ美術館との共同企画展「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」(東京都美術館/約37万人を動員)が開催されました。

画家の初期の画業の軌跡をたどる今回の「ゴッホ展」は東京での展覧を終え、「兵庫県立美術館」で2020年1月25日~3月29日まで展覧されます。同館がゴッホ展を開催するのは2002年に開かれた「ゴッホ展 兄フィンセントと弟テオの物語」以来18年ぶり。その際の約34万人の動員数を今回は上回るものにしたい、と同館館長、蓑豊氏は内覧会に集まったメディアの前で抱負を述べました。

今回の展覧会は27歳という、画家として遅いスタートを切り、その後約10年間の短い画家人生の中で、いかにしてゴッホはゴッホとなったのか、“ビカミング・ゴッホ”とも言うべき画業の軌跡を追いかけます。

画家としてゴッホが最初の段階で惹きつけられた「ハーグ派」と、その後、パリで弟テオのもとに身を寄せながら出会った「印象派」にフォーカス。マウフェ、モネ、セザンヌなど両派の画家たちの絵と並列に、その時々のゴッホの習作や作品を時系列に展示することで、観客に画家が受けた影響と変化を分かりやすく見せてくれます。

初期の習作に比べると、年を追うごとに、必死の努力と生来の真面目さで、目をみはるほど絵の技術力と表現力の腕が上がっていくさまが良く分かります。また、単なる技巧の向上だけでなく、その折々の画業の合間に弟テオや友人たちに画家が送った手紙の中から、抜き書きした言葉も展示することで、よりいっそう、ゴッホの内面が成熟し、激しい情熱がカンヴァスの上に発露していく流れを観客が理解できるよう工夫されています。

同展ではゴッホの絵を48点、ハーグ派の絵を18点、印象派の絵を15点展示。いずれ劣らぬ素晴らしい作品ばかりですが、特に7年ぶりの来日となるファン・ゴッホの代表作の一つである「糸杉」と、画家人生の後期に描かれ「最も美しい作品の一つ」と評される「薔薇」はぜひゆっくり時間をとって鑑賞してみてください。

前者は絵の前に立つと、まるで目の前の空間がゆがむほどの生々しさで、樹の持つ激しい生命力が見るものに伝わってきます。後者は静かに咲く白薔薇の美しさが、どれほど人生の苦難をくぐりぬけようとも、なお失われぬ画家の純粋な魂の輝きを感じさせてくれる傑作です。

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 最後に同館学芸員の小野尚子さんにどうしてこんなにも日本人はゴッホが好きなのか聞いてみたところ、以下のように答えてくれました。

「やはり、ゴッホは浮世絵から影響を受けたことで知られる通り、日本に影響を受けた画家です。そこが日本人にとっては親近感を覚えるのではないでしょうか。また、10年という短い画家人生の中で、自分自身の絵を見つけるために真剣に努力と研鑽を重ねる姿勢や、厚塗りの絵に重ねられた一筆一筆が愚直なまでに考え抜かれて塗られていること…そのような真摯な情熱が日本人の心の琴線に触れるのではないでしょうか」

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■特別展『ゴッホ展』
・展示会期:2020年1月25日[土]~3月29日[日]
・開館時間:10時~18時(金・土曜日は20時まで。入場は閉館の30分前まで)
・休館日:月曜日 (ただし、2月24日[月・休]は開館、翌25日[火]は閉館)
・会場:兵庫県立美術館
・所在地:〒651-0073 神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1
・入館料:▽一般/1,700円、大学生/1,300円、高校生以下無料 ▽団体(20名以上)・一般/1,500円、大学生/1,100円、高校生以下無料
・主 催:兵庫県立美術館、読売新聞社、読売テレビ

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