セカンドライフがぶっ飛び! 役目を終えたお雛さまのリアルな暮らしぶりが話題…「福よせ雛」発案者に聞いた

太田 浩子 太田 浩子

 お雛さまといえばすまし顔で上品に微笑むお顔が印象的ですが、こんなにも表情豊かでアクティブだった? と驚かずにはいられない写真がSNSで話題になっています。おしゃれをしたり、仕事をしたり、ゲームをしたりするお雛さまたちが、ぶっ飛んだ世界をつくっています。

 SNS上には「現代を謳歌している感じがとてもかわいい」や「風刺が効きすぎてて最高なんだが?????wwwwwwwwww」、「かなりハジけてて楽しい」「人形への愛が溢れてて素敵」「見に行きたいなー。」とお雛さまのセカンドライフを歓迎する声が投稿されています。

 写真の『福よせ雛』とは、家庭で不要になったお雛さまが再び活躍できる場をつくり、地域づくりに役立てようという取り組みです。「私たちは9人のおばあさんたちの集まりです」という名古屋市近郊のボランティアで活動する主婦を中心に、プロジェクトの主旨に賛同した地域団体が参加して、2020年は愛知県・岐阜県・鳥取県・フランスの全25会場で『第10回福よせ雛』が2月1日から5月6日まで開催されます(会期は会場によって異なります)。

 家庭のお雛さまが「福よせ雛」として引き受けられると、お雛さまの既成概念にとらわれることなく、お雛さま時代にはできなかった(?)自由な生活が送れるという設定。座ってばかりだったお雛さまたちが、走ったりピザを食べたり、マージャンをしたりと、会場のテーマにあわせて個性豊かにつくりこまれます。発案者でプロジェクト代表の吉野孝子さんに聞きました。

 ──「福よせ雛」にはどんな意図があるのでしょうか?

 不要になったお雛さまを捨てるよりも、いかしてあげる方がいいと思うんです。お母さんやおばあちゃんが子どもや孫のために買ってくれたわけでしょ? 誰だって捨てづらいですよね。だから、あなたの大事なお雛さまをお預かりして、どこかの町で皆さまの役に立っていただく。私たちがお雛さまを大事にすることは、もとの持ち主の気持ちを大事にするということだと思っています。だからお雛さまの人権を考えつつ、楽しいお雛さまに変えてあげようってアイデアをひねり出しています。

 ──テーマがなかなかぶっ飛んでいますが、こんな飾り方はNGというのはありますか?

 人間と同じで人を傷つけたりするようなものはいけないです。でも、特別な決まりがあるわけではなく、見て楽しいお雛さまにして毎年見に来てもらえるようにすることが大切だと思っています。そうじゃないと続けていけなくなって、せっかく集まったお雛さまたちを捨てなくちゃいけなくなりますから。ですから一度参加した団体はやめることは許されません(笑)。ただイベントとしてやりたいということではなく、私たちと理念が同じであることを大事にしています。

 ──飾ることがなくなってしまったお雛さまをまだ引き受けてもらえますか?

 会場が増えていっているのでお雛さまが足りない状態です。大事な子たちをお預かりしますから、よかったら会場に遊びに来てね、どこにいるかはわからないけど(笑)。ただし鳥取県・日野町に送られる場合は、お雛さまに特別住民票が発行されますので、自分の子がどこにいるかわかりますよ。

 ──飾ったあとのお雛さまはどうなるのですか?

 プロジェクト実行委員会があるところはそこで管理しますが、ほかのお雛さまは、プロジェクト事務局(愛知県名古屋市)に全部戻ってきます。戻ってきたら分類して汚れないようにビニール袋に入れて来年までお休みしてもらいます。

 ──何度も活躍するんですね。供養を気にされる方もいらっしゃいます。

 供養されてから送られてくるお雛さまもありますが、私たちは最後までつかってあげるというのが本当の供養だと思っています。最後までうちの子をつかって欲しいという思いを受けるんです。本当に壊れてしまったら、それぞれの場所でありがとうと供養させてもらいますから、それでよろしかったらお預かりしますという形です。そうは言っても、数万体のうち壊れるのは1年に10個くらいしかないですけど。最初に飾ったお雛さまはもう10年生きています。

 かつて自分のお雛さまを飾っていた皆さん、そのお雛さまは今どうしていますか? 何年も押入れの奥にしまったままや、どうなってるかわからないなんて言う人も。そんなお雛さまがいきいきと第二の人生を楽しめるのなら送り出してあげるのもひとつの選択肢かもしれませんね。

福よせ雛プロジェクト事務局(日本社会文化教育機構)https://www.shakaibunka.jp/

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