ゴーン被告は日本に帰らない…レバノンとの引き渡し条約なく、身柄拘束も不可能で捜査難航

小川 泰平 小川 泰平
第1回公判前整理手続きのため、東京地裁に入る前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告=2019年5月23日(提供・共同通信社)
第1回公判前整理手続きのため、東京地裁に入る前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告=2019年5月23日(提供・共同通信社)

 会社法違反罪などで起訴され、保釈中の前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告が日本を出国し、国籍があるレバノンの首都ベイルートに到着したと、複数の欧米メディアによって報じられたのが日本時間31日のこと。同被告は保釈の際の条件として海外渡航を禁止されていたため、大みそかに駆け抜けた衝撃的なニュースを受け、日本の法曹関係者らは「寝耳に水」と頭を抱えた。神奈川県警国際捜査課時代にはソウルに出張し、韓国警察庁との合同捜査の経験を持つ、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は当サイトに、出国の背景や今後の捜査の行方をつづった。

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 ゴーン被告に対して、検察と入国管理局の双方が連携し、出国留保(海空港手配)がされていたはず。それでも極秘に出国した。同被告が海外に滞在していることが確認されれば、保釈は取り消され、保釈保証金は没収となる。

 日本は、レバノン共和国とは犯罪人の引き渡し条約がない。ゴーン被告がレバノンに滞在していることが確認できれば、同国に対して被告の身柄の引渡しを要求することはできるが、レバノン側が自国民を引き渡すことは考えにくく、不可能だと言えるだろう。

 では、どのような手段で出国したのか。保釈の条件の1つに、海外渡航が禁じられ、パスポートを弁護人が管理することになっていたのであれば、そのパスポートで出国したとは考え難い。在日レバノン共和国の大使館から、自国への出国の為の臨時旅券の発給を得たか、他人名義の旅券等で出国した可能性も否めない。

 また、プライベートジェット機なら、荷物の中に入るとか、乗務員に扮することも可能である。フランス紙の電子版では妻が計画してジェット機に同乗したと報じられた。レバノンの主要テレビ局(電子版)は同被告が楽器箱に隠れて日本の地方空港から出国したと報じている。だが、いずれも情報源は明らかにされておらず、現時点で信ぴょう性は不明である。

 今後は、ICPO(国際刑事警察機構)の協力を得ての捜査になる。ICPOには、9種類の国際手配があるが、当面は青手配(情報照会)にとどまると思われる。青手配で得られる情報は、出入国の履歴、滞在場所等であるが、あくまで出国先のやり方1つである。また、滞在先が判明しても身柄を拘束することはできない。困難な捜査になることは否めないだろう。

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