15歳の老猫ハナちゃん、引っ越し業者の不手際で逃走!…80歳近いおじいさんが「43日間」に及ぶ執念の捜索

木村 遼 木村 遼

 今年6月のことだった。私たち夫婦が兵庫県宝塚市内で代表を務めている動物愛護・福祉協会「60家(ロワや)」に、あるおじいさんから迷い猫の相談があった。

 「猫が逃げてもう1カ月経つんだけど、見つからなくて…。どうしたらいいのか教えてほしいんです」

 話を聞くと1カ月前に自宅の引っ越しをしている際、2匹の飼い猫ミィーちゃんとハナちゃんが逃走してしまったという。引っ越し業者は逃がしたことをすぐに報告しなかったそうで、気づいて探し出そうとした時、すでに猫たちは近くにいなかったという。

 依頼主は老夫婦で、奥さんは施設のお世話になっている。80歳近いご主人は引っ越し後の片づけもできないまま、奥さんの面会と猫探しで大忙し。奥さんがいる施設と以前住んでいた自宅に毎日足を運んでいた。連日探し続けたかいあって10日後にミィーちゃんは何とか保護できたそうだが、もう1匹のハナちゃんは見つからない。

 猫探偵に頼もうかと考えたそうだが、高額すぎて諦めざるを得なかった。猫探偵は交通費や数日分の宿泊代もかかるため、費用は一般的に数10万円かかる。そこで、知り合いに相談して「60家」を知り、今回連絡をくれたのだという。

 ハナちゃんは15歳の老猫。おじいさんは「今までずっと家で飼ってきたハナを最後に外で苦しい思いをさせて死なせたくない、そう思って必死で探している」と涙ぐみながら語った。私たちも「死なせてたまるか!」と思い「絶対に生きているのでハナちゃんを見つけましょう!」と声を掛け、一緒に猫探しを始めた。

 すぐにチラシを作成し、脱走した現場付近で配布。すると5日後に『近くでハナちゃんらしき猫を見かけた』との情報が届いた。

 おじいさんはすぐに現場に向かい、付近で「ハナちゃん!ハナちゃん!」と声をかけた。すると遠くの方で「ニャア」とそれらしき声がした。顔も確認できて、ハナちゃんに間違いないことが分かった。ただ、この日は夜遅くまでの捜索で、おじいさんもかなり足腰に疲れが出ており、翌日保護することにした。

 一夜明けて現場付近に捕獲器をセットすると、すぐにハナちゃんが現れた。捕獲器を警戒しながらも中に仕掛けられたご飯を気にして、クンクンと鼻を鳴らし忍び足で近寄ってくる。相当お腹を空かせているようだ。そのまま捕獲器の中へ入り、無事保護することができた。

 脱走してから43日目。まさに奇跡の生還だった。少し風邪を引いていたが、そこまでやせ細っておらず危ない状態ではなさそうだ。私たちは顔を見合わせ、喜びを分かち合った。

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