人と人も運命の出会いや偶然の出会いを果たすことがあるが、人と猫も、どこかでつながっていることがある。子猫のすずたくんは、母猫とはぐれて1匹でいたところ、猫を飼おうと思っていた人に保護された。
夕暮れ時、たった1匹で鳴いていた子猫
2017年11月の夕暮れ時、東京都多摩市に住む澤田さん一家が外出先から帰ってきたところ、外で、猫が「ニャアニャア」と鳴く声がした。「どこにいるんだろう」と、奥さんとお嬢さんが近所を探すと、2軒先の家の前庭の草の中に1匹の子猫がいた。捕まえられると思ったのか、子猫は、澤田さんが近づくと、澤田さん宅の隣家の車の下に潜ってしまった。
ミルクの入った器を車の近くに置くと、お腹がすいていたのか、少しずつ近づいてきた。ミルクに夢中になっているすきに、ご主人が背後から子猫を抱き上げて保護したという。
家に連れ帰ると、子猫は家具の下に潜って警戒した。ただ、猫用ミルクを買ってきて与えると、外に出てきてゴクゴク飲んだ。奥さんがじっと座っていると、膝の上にも乗ってきた。
少しでも動くとびっくりしたようだったが、1日目にして甘えん坊っぷりを発揮。人の後をついて回っていた。
運命の出会い
保護した翌日、動物病院に連れて行くと、生後2カ月くらい、少し脱水症状があり、被毛も若干汚れていた。獣医師は、「お母さん猫とはぐれて、一週間くらい一匹で放浪していたのだろう。もうすぐ寒くなるので、子猫一匹では生きられなくなる。よく保護してくれたね」と言った。
澤田さん一家は、小学校5年生のお嬢さんが、以前から「猫が欲しい」と言っていた。夫妻は、ペットショップやブリーダーから買うのではなく、シェルターから譲渡してもらうことにしていた。
「具体的に、いつもらうとか、どこのシェルターからもらうとか決めているわけではなかったんですが、ちょうどその頃、猫を飼えたらいいなと家族で話していたので、偶然子猫をみつけて運命の出会いのように思いました」
誰かが飼っていた猫かもしれないと、パソコンで地域の迷い猫掲示板などを検索したが、どうやら野良猫が産んだ子猫のようだった。
澤田さんは、目が真ん丸で、お守りなどについている日本の鈴の形をしていたので、「すずた」と名付けた。
36時間の脱走劇
特に病気もなく、すくすくと育ったすずたくん。2019年7月で1歳11カ月になる。外で暮らしていたせいか、どうしても外に出ていきたがるので、澤田さんは、ハーネスをつけて庭で数十分遊ばせるのを日課にしていた。
ところが、2019年5月、午前10時くらいにすずたくんを庭で遊ばせていたところ、ハーネスがするりと抜けて、脱走してしまった。あっという間の出来事だった。
澤田さんは、インスタグラムの猫仲間に相談し、帰り道が分かるよう、猫が逃走した道に使用済みの猫砂をまき、家の外にエサを置いた。Webで検索すると、都内の動物病院で捕獲機を貸し出してくれるところがあったので、捕獲機を借りてきた。ペットを探してくれる探偵にも相談したという。
翌日の夜、捕獲機を設置しようと準備していたら、外から「ニャア」という猫の鳴き声がして、見に行くと、すずたくんが帰ってきていた。無理に捕まえようとすると逃げる可能性があったので、猫用おやつを与えながら少しずつ引き寄せた。お腹が空いていたのか、すずたくんは、夢中でチュールを食べた。食べ終わると、ハッと我に返ったようにトイレをしに行った。
無事に戻ってきたすずたくん。いまは、完全室内飼いになり、二度と放浪の旅に出ないよう、大切にされている。