「かわいすぎ!」ピカチュウやモンスターボールの和菓子が話題…「畑違い」から飛び込んだ職人の挑戦

広畑 千春 広畑 千春

 とはいえ、職人の世界も甘くはありません。店は大正時代から続く老舗だったこともあり「ずっと下積みでしばらく材料を触らせてもらうこともできなかった」。土屋さんは親方の背中を見て、家に帰って一人で勉強を重ね、さらに月1~2回、新幹線やバスで東京にある和菓子組合の勉強会にまで足を運び、老舗和菓子店の跡取りたちに交じり、技術を学び、腕を磨きました。

 5年ほど前に移った店でようやく商品を作るようになり、仕事終わりにトトロなどを趣味で作るように。キャラものはマニュアルもなく試行錯誤しながらでしたが、2年ほど前からSNSで紹介したところ、大きな反響が。店頭販売ではなく、個人的な依頼やイベントのために作るだけですが「和菓子って素晴らしい伝統なのに、やっぱり一般の人にはちょっと敷居が高い。あまり興味がなくても面白いと感じ、多くの人に和菓子の魅力に気づいて貰えたら」と話します。

 さらに昨年11月からは実演パフォーマンスも披露。なぜかキツネのお面をかぶった姿ですが「僕自身が駆け出しのころ、親方が菓子を作っているのを『魔法』のように感じたんですよね。和菓子って実はすごく作るのが難しいんですが、それが、あっという間にできていくんですから…。そんな感動を子どもたちや外国の方が感じてくれたらうれしいです」と話します。

 ただ「業界が縮小しているのも肌で感じる」とも。実際、タウンページデータベースによれば、全国の「タウンページ」の菓子店(和菓子)カテゴリに登録された店の件数は、2015年に1万1422件。10年前と比べ3千件以上減少しています。小規模店舗が多く、後継者不足や売り上げの伸び悩みなどにも直面しているといいます。

 それでも、最近では土屋さんのように、若手を中心とした職人たちがSNSを駆使して新たな魅力を発信したり、挑戦したりする姿も目立つようになりました。「僕自身、まさか和菓子職人になるとは思いもよらなかった」と土屋さん。来年には自分の店を構える予定で「和菓子って本当に、楽しい。自分なりに良さを伝えていきたい」と力を込めます。

 ちなみに、土屋さんのイチオシはやっぱり「ピカチュウ」。立体的なものはフィギュアに間違われることもあり、お客さんがびっくりして喜んでくれるのが、たまらないんだそうです! 本物、見てみたい!

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