ホテルがない。部屋があっても、べらぼうに高い。困った…。
予想された事態とはいえ、来年7月24日~8月9日の東京五輪開催期間中、及びその前後も含めて首都圏のホテル予約が厳しい状況になっている。観戦チケットを購入できた人でも、懐具合に見合った価格で部屋を探すのに四苦八苦という皮肉な事態になっている。
一方、五輪とは無関係な、出張や用事等の「のっぴきならない事情」でもって東京やその近郊でホテル宿泊を余儀なくされる人にも厳しい余波が及ぶ。その時期の東京観光やイベント、公演等の観覧を避ける人も多いだろう。
実際にホテル予約サイトを検索した。2020年7月24日から「シングルで大人1人」の設定で、競技会場へのアクセスがよい「お台場、汐留、新橋、品川」エリアを「A社」で調べると、12月1日時点で13軒のホテルに空き室があった。最安値で最多は4万円台で4軒、次いで3万円台が3軒。残りは2万、5万、6万、8万、9万、10万円台が各1軒。他のエリアもそうだったが、平均的な相場は3~4万円台のようだ。
現時点での料金と比較した。来年7月に4万円台の部屋は現在1万円台が多く、3万円台の部屋では6700円という価格もあり、相場は通常の3~5倍。極端だったのは、12月初めに大人1人素泊まりツインで9000円の部屋が、五輪開幕日には同条件で11万9500円余りと約13倍になっているケースもあった。
「B社」も同条件で14軒あり、最安値で最も多いのが3万円台で4軒、続いて4万円台で3軒、6万円台と10万円台で各2軒。5、8、9万円台で各1軒。A社と重複している部屋も多かった。
まだ、部屋はある。でも、高い。それが現状。そして、いずれのサイトでも「空室わずか」「残り1~3室」といった表示が出ており、年が明けるとどうなるかは分からない。
背景には大会組織委員会が大規模ホテルチェーンなどの部屋を関係者用に仮押さえしていることが挙げられる。
組織委は当サイトの取材に対し、「首都圏の1都3県で4万6000室を仮押さえしています。今後、必要な部屋数を確認してから、順次リリースしていきます。リリースとは仮押さえの解除をしてホテルさんに部屋をお返しすることですが、一度に戻すことはできず、利用状況が分かったところから順次リリースになります」と説明した。
さらに、組織委は「業界団体には『価格が高騰しないように』とお話させていただいていますが、部屋をお戻しした後で、通常の形で部屋をご提供されるのか、ツアーのパッケージ等でご提供されるのか、それは各ホテルさんの経営判断によります」と補足し、リリース後の対応は業者側に委ねる構えだ。
そこで、競技会場にも近い江東区内のホテルに聞いた。担当者は「一般のお客様には『7月からは貸し切りです』とご案内しておりまして、今後ご提供できるかは不明です。全フロア貸し切りか、うち何フロアになるかは分かりません。連絡を待ってから対応します」と明かす。
つまり、五輪関係者との調整が終わるまでは、部屋を一般客の予約のために開放することはできず、問い合わせに対しては「貸し切り」としたまま、受付が先延ばしされている。見通しが流動的であることから、情報サイトに掲載された、仮押さえされていないホテルの部屋が確実性と希少価値から高騰しているという側面があるわけだ。
庶民の声を反映するSNSでは「東京五輪ではなく関係者五輪」と皮肉を込めた投稿も目についた。五輪招致のプレゼンテーションで話題になったフレーズ「お・も・て・な・し」は、あくまで関係者に向けられたもので、庶民との距離があることを改めて実感した。