撮ったぞ大正時代エネルギッシュ!…現役活動写真弁士が、映画『カツベン!』の周防監督に独占インタビュー

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大森 それぞれすごく個性があるなと思いました。私は現代で弁士をやっているので、現代弁士に何かもし思われることがありましたら教えてください。

周防 僕がシナリオを読んだあとにすぐ、いろんな活動弁士さんの上映会に行ったのですが、明らかに当時と違うと思ったのは、歴史。活動弁士の歴史ではなく、映画の歴史です。当時の活動弁士の皆さんは、映画の未来について、それほど具体的なイメージはなかった。今、目の前にある動く写真、それは自分の語りの素材であるというのがたぶん強かったと思います。ただ、今、弁士をやるということは、映画が100年以上の歴史のなかで、ひとつの芸術作品として確立して、尊重しなければいけないことが絶対にあるはず。要するに、一本の作品が持っているテーマや味わいというのを、弁士の言葉によって壊してはいけないという思いがたぶん強くある。本当に今の弁士は控え目というか、謙虚なしゃべりだなという印象がありました。たぶん、大正時代に行ったら、もっとめちゃくちゃにやっただろうなと。この作品は「この監督のものではなく、自分のものだ」と。自分のしゃべりの素材だからと、好き勝手にいろんなことが言えた。現代の弁士さんは、そういう意味で、映画の価値がある程度確立されたところでしゃべるから、ものすごく大変だろうと思います。むしろ、大正時代に行ったら、今、ご自分が語っている語りとまったく違う、もっと自由奔放なめちゃくちゃな語りができたはずだと思います。

大森 あの映画を見て、私ももうちょっと個性的に行きたいなと思いました。

周防 ある程度やってもいいのかなという気がするんです。活動弁士がどういう存在か認知されれば、それぞれの弁士のしゃべりを楽しむという文化が生まれると思うんです。今、見に行っているほうも、活動弁士付き上映会で映画を見に行っている。当時の観客は映画を見に行っていたわけではなく、半分、弁士の語りを聞きに行っていたんです。映像文化だったにもかかわらず、日本の観客は語りとして映画をとらえていた部分がものすごく大きかった。そういうものだったんだという認識が今の観客にあったら、映画は映画として、弁士付き上映として楽しめると思うんです。そういう意味では、弁士が変わるというより、まず、受け止める側の観客が、きちんと映画的な経緯を、映画史をちょっと分かってくれれば、もっともっと今の活動弁士さんは自由に、「こんな見方もできます」という形のしゃべりもできるんじゃないかなと思います。

大森 そのためにも、多くの方に、この映画『カツベン!』を見ていただきたいと思います。最後に監督からリスナーの方にメッセージをお願いします。

周防 この映画は活動弁士について、活動弁士というのは何か、活弁の楽しさというのはもちろんわかる映画ですが、実は映画全体が昔の活動写真のテイストに満ち溢れたものにしようと思いました。笑いにしても、ドラマの展開にしても、アクションシーンの撮り方にしても、昔の活動写真を意識して作ったので、楽しい映画だといったとき、皆さんの楽しいと、少し次元の違う面白さがあるので、ぜひそこを楽しんでもらいたいなと思います。

映画『カツベン!』(2019年12月13日全国ロードショー)
監督:周防正行
出演:成田凌、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真、竹中直人、渡辺えり、井上真央、小日向文世、竹野内豊
脚本・監督補:片島章三
製作:「カツベン!」製作委員会
企画・製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ
配給:東映
ホームページ:http://www.katsuben.jp/
Twitter:https://twitter.com/suofilm
Instagram:https://www.instagram.com/katsuben1213/

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