撮ったぞ大正時代エネルギッシュ!…現役活動写真弁士が、映画『カツベン!』の周防監督に独占インタビュー

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大森 そもそも、なぜ活弁の映画を撮ろうと思われたのですか

周防 もともとはずっと僕の映画で助監督をしてくれている片島章三さんという人が、彼の話でいうと20年来の企画だったらしくて。数年前に彼から映画のシナリオを書いたので読んでみてくれないかということで、見せてくれたのが、『カツベン!』という映画のシナリオ。それを読んだとき、面白いと。本当に素直にね、観客として、「これ面白いよ、絶対に映画にしたほうがいいよ」と話をしたら、それを聞いてたプロデューサーが、「だったら監督、映画を撮りませんか」と言ってくれたんです。だから、「えっ、撮らせてもらえるのなら、撮りたい」ということで始まったのです。そのシナリオを読んで面白いと思ったことはたくさんあるのですが、振り返ってこういう場所でいうべきことは、活動弁士という、映画のスクリーンの横に人間が立って内容を説明しながら見せるというこのやり方、上映方式が、日本独特のもので、アメリカでもヨーロッパでもそういう映画の見せ方をしていなかったことが大きいということ。そこに、なんで日本だけこういう見せ方が定着したのかというところに、日本文化の秘密というのがあるような気がしましたし、この映画全体が昔、活動写真が持っていたエネルギーに満ち溢れている、そういうシナリオだったんです。それを再現してみたい、表現してみたいというのが、強くありました。

大森 私も試写で拝見させていただきました。当時のエネルギッシュな感じが画面からあふれてくるような気がして、本当に楽しかったです! そのなかで、当時の雰囲気が実に細かいところまで再現されていてびっくりしました。私は大正時代にタイムトリップするのがひとつの夢なのですが、まるで夢が叶ったみたいな感じがして、素晴らしいと思いました。再現するにあたってのこだわりや、大変だったところはありましたか。

周防 まず、活弁のシーンが、本当に当時の人が楽しんでいたであろう、そういうリアリティにあふれているようにしなければいけなかった。「おっ、すごいな」、「このしゃべりとか、これだったら楽しいよね」と。とにかく、活動弁士のしゃべりには一番こだわったところです。これは成田さんに本当に一生懸命稽古していただきました。(活動写真弁士として活躍中の)坂本頼光さんにぴったりついてもらって、クランクイン2か月前からやってもらったんです。役者以外のところでいうと、大正時代の景色、情景をとるのが一番大変でした。要するに、今の街のなかで再現するわけですから。たとえば、シナリオに「街を走り抜ける自動車」と書いてあったら、そういう絵を取らなければいけないのですが、まずは(現代は)道路がアスファルトですし、地べたの、土の地面の街なんて、どこにもない。だから、映画館の街なみは、京都の太秦・東映の撮影所で、オープンセットで、映画館の表側だけを作って撮りました。中は、実際に(情景が)ある場所を探したのですが、福島県に移築されていた、明治時代に建てられた芝居小屋というのがあったんです。外側は整備されているので(撮影として)使えないが、中だけなら使えるので。そこは明治時代にできて、後に映画館にかわった劇場。そのリアリティのところですよね、柱とかそういうものが醸し出す空気感とかでできました。ただ、追っかけのシーンとか、オープン(野外撮影)がいっぱいあるんですよ。日本全国、「ここだったら大正時代を撮れます」という場所を探すのは大変でした。

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