バリ島に住む加納さんは、保護犬のはなちゃんを飼っている。はなちゃんは、突然住宅地に現れたのだが、交通事故にあったか誰かに故意に傷つけられて、右後ろ脚を怪我していた。傷ついたはなちゃんを、先住犬のぱんくんは優しく迎えた。
右後ろ脚を怪我した子犬
加納さん夫妻は、バリ島で暮らしている。バリ島には、昭和の時代の日本のように野犬がいて、放し飼いされている犬も多いという。
はなちゃんは、2016年5月、加納さん宅の近所の家の前の道路にぽつんと立っていた。バリ島南部の田舎で、家がポツン、ポツンと建っている程度の静かな場所だった。
加納さんは、国外から遊びに来ていた妹さんを空港へ送り届けようとしていたところで、チェックインまで、あまり時間の余裕がなかったが、不審に思い、車を降りて周囲の人たちに状況を聞いたら、1日、2日くらい前に突然現れたのだという。結局、はなちゃんがあまりにも小さく、近所で見かけたことがない子だったので、保護することにして、動物病院に向かった。
バリ島は、日本のような狂犬病フリーの国ではなく、狂犬病にかかっている犬もいる。はなちゃんは、見たところ狂暴そうではなく、右後ろ脚を引きずっていること以外は健康そうだったので、狂犬病の犬だとは思わなかったそうだ。
事故か誰かに傷つけられた脚
動物病院で診てもらうと、右後ろ脚は、バイクなどの事故にあったか、誰かに故意に傷つけられたのかもしれないということだった。成長してから痛みが出るかもしれないと言われたので手術をして、術後は鍼治療やマッサージを施したが、元の脚に戻ることはなかった。
「術後3年以上経つのですが、現在も3本の脚より筋力が弱く、足先は地面に着かないんです。でも、歩いたり走ったりするのはまったく問題なく、元気に走り回っています」
優しく迎えた先住犬
加納さんは、当初、はなちゃんの里親さんを探すつもりだった。先住犬のぱんくんが少しでもはなちゃんに拒否反応を示さないか注意深く観察していたが、まったくそんな素振りはなかった。
少し緊張気味なはなちゃんにゆっくり近寄り、まるで「僕も保護犬なんだ。ここに来られてよかったね、仲良くしようよ」と言っているようだった。
「特に印象的だったのは、ぱんがはなの右後ろ脚を優しくなめてあげたことです。相手の弱い部分に気づき、いたわるような仕草を見た時、ぱんははなを迎え入れたのだと確信しました」
ぱんくんが生きていた時は、甘えん坊のお兄ちゃんっ子だったはなちゃん。優しいぱんくんに、いつもべったりくっついていたという。寝る時は必ず寄り添い、一緒に遊んだ。
ぱんくんが亡くなった後、甘えん坊気質であることに変わりはないが、後から来た14匹の犬を従えるしっかり者になったという。はなちゃんが放つオーラは強烈で、家の中でも外でも、歯向かう犬はいない。面倒見が良く、他の犬とよく遊んであげる。
特技は、敷地内に出没するオオトカゲを仕留めることだという。