決して“ゆるくない”田舎移住の現実 地元民との心の壁を壊すには…秘境カフェ店主に聞く

北村 守康 北村 守康

 「田舎暮らしと聞けば、仕事のペースを落し、自然に囲まれてゆったりと暮らすことをイメージする人も多いと思います。しかしそれはすでにビジネス的成功を収めている人、あるいは人里離れて自給自足の世捨て人のような暮らしを求める人だけに言えることで、新たな職に就こう、事業を興そうとする人にとって、都会より田舎のほうが楽ということは決してないと思います」

 過疎化が進む地域の人々は、都会、よそからの若者に期待を寄せている一方で、地域の秩序を乱されることを極端に嫌う。まず地域の人々を尊重し、前向きなコミュニケーションで信頼を獲得し、地域に馴染むことができればどんどん後押ししてくれる。地域の人々も都会から来た若い力に頼りたい気持ちもあるが、自分勝手に振る舞われると迷惑でしかない。地域住人との付き合いにしても、新たなビジネスをするにしてもバランス感覚が欠かせない。

 「例えば、地元産にこだわった宿泊施設を開業しているとします。食材、身の回りの物すべて地元産で揃えようとする余り他には目が向かず、掃除や接客がおろそかになっては本末転倒です。経済的成功をし事業税を多く納め、雇用を創出することで初めて地域に貢献していると胸を張って言えます」

 夢と希望、思いつきだけでは、結局都会へ舞い戻る羽目になってしまう。田舎で新たなビジネスをしようとするなら、実現性あることに対して計画性を持って挑むのが最善の策。これは都会も田舎も関係ない。

 「店のお客さんで、地域おこし協力隊の制度を利用して関東から近くの村に移住して来た若者がいました。彼は3年の任期中にさまざまなアイデアで村内に活気を生み出し、地域の人たちから愛され、そして頼りにされていました。任期終了間近になって、このまま村に住み続けるよりも外から村を支えたほうが今の自分には、村により貢献できると考え、村関連の仕事も請け負う大阪の企業へ就職していき、今は外から村をサポートしています。とてもクレバーなやり方で、10歳以上も年下の若者ですが心から尊敬します」

 価値観の多様化によって、「田舎(らしさ)」のニーズは年々大きくなっている。一方で地方の過疎化は社会の最優先課題の一つではあることは周知の事実。田舎を安息の地ととらえるのではなく、開拓の地ととらえ、自らが豊かになることで地域に貢献する。そんな気概で田舎移住に挑んでもらい、地域の人々と喜びを分かち合ってもらいたい。

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