全国から公募した自主製作映画を上映するイベント「神戸インディペンデント映画祭」が11月29日~12月1日、神戸市内で初めて開催される。コンペ部門の入選作や第33回サンダンス映画祭のショートフィルム部門で日本人初のグランプリを受賞した「そうして私たちはプールに金魚を、」(長久允監督、2017年)の上映、神戸の映画関係者らが普段の仕事や映画の未来を語るトークセッションなどの多彩な企画を通じて、映画の奥深い魅力の一端に触れることができる3日間になりそうだ。
審査を通過した秀作25本を一挙上映
上映される入選作は、今年7月1日~8月23日に応募があった231本の中から、審査を通過した25本。内訳は20分以内の短編12本と60分以内の中編13本で、アニメからヒューマンドラマ、コメディ、SFに至るまで、ジャンルを問わない秀作が揃った。すでに他の映画祭でグランプリを受賞している作品もあるという。この25本は数本ずつ7プログラムに分け、11月30日、12月1日の2日間、神戸・三宮の劇場「シアター・エートー」で上映する。
これとは別に、11月29日には地元の映像クリエイターの作品10本前後を紹介する「KOBEセレクション」、映画宣伝に携わるプロ3人による業界研究トークセッション「おしえて!映画宣伝のセカイ」、神戸の映画館関係者と映画ファン、映画製作者が一堂に集い、本音で語り合うスペシャルトークセッション「映画のあしたはどっちだ!?」を実施。運営には、関西の学生有志でつくる「映画チア部」などが協力する。
全てはこの男から始まった
ちなみに映画祭の主催者は「神戸インディペンデント映画祭実行委員会」。一見立派な組織のような名前だが、実質、斉藤啓さんという41歳の男性が、企画の立ち上げからほぼ1人で切り回している。
斉藤さんは大阪芸術大学の映像学科を中退後、イベント運営や観光PRの仕事を転々とし、5年前に神戸の広告会社「神広企画」に入社。営業担当として様々な催しに関わるうち、なぜか「自分でも神戸で何かやりたい」という気持ちがむくむくと湧いてきたそうだ。
そこで目をつけたのが、各地で開かれている「映画祭」。斉藤さんは本業の傍ら、2018年3月から今年5月にかけ、神戸で計5回開催された映像クリエイター向けのイベント「神戸クリエイターズミートアップ」に携わったほか、10カ所以上の地方映画祭に参加して運営の手法を研究してきた。「インディペンデント映画祭」と銘打った理由は、自主製作(インディペンデント)映画のクオリティが近年目覚ましい進化を遂げていることを、多くの人に知ってもらいたいからだという。
斉藤さんは「自主製作映画は、誰にも頼まれていないのに文字通り自主的に作っているところが面白い。つまり、作りたい、表現したい、という欲が抑え切れない人たちばかりだということ。クリエイターたちの『ゼロから何かを生み出したい』という情熱は何より尊いと感じますし、観客にもきっと刺激になるはずです」と話す。
つまらなかったら返金します
初開催となる今回は、予め「つまらなければチケット料金を全額返金する」と宣言。「お金のことは抜きにして、自主製作映画がどんなものなのか、まずは見てもらいたい」という強い思いを込めた。
初回の成功を弾みに、来年以降も2回、3回と続けていきたいと考えている斉藤さん。「市民の手づくりイベント、というところには絶対甘えず、作り手も観客も誰もが楽しめる“ちゃんとした”映画祭を目指します。公的機関からの助成金なども一切いただいていないので、表現についても制限を設けず、徹底的に自由を貫きたいと考えています」と話している。
■神戸インディペンデント映画祭 https://kobe-filmfes.com/
■シアター・エートー(会場) http://www.a-to-kobe.jp/