老犬も若いワンちゃんも快適に過ごせる老犬介護ホーム「MELLOW(メロー)」はだれもが預けたくなるような細やかな気配りと愛情が詰まった空間だ。大阪市城東区にオープンして間もなく3年、立ち上げた経緯と人気の理由を取材すると、そこは「自宅に帰りたくないワン」と思わせるような場所だった。
「メロー」を経営しているのは竹内秀公さん、ひろみさん夫婦。先代から引き継ぎ50年続いた「竹内印刷」をたたんで1階をリニューアルし、2016年12月に開業した。きっかけは施設の名前にもなっている愛犬「メロー」の存在だった。ラブラドールレトリバー(牝、チョコレート)のメローは4匹飼っていた中の1匹。生後9カ月のとき、右後ろ足の人工股関節を手術した。
「ラブラドールは8カ月ほどで一気に成長するので関節が追いつかない場合があります。メローは股関節形成不全。手術して歩けるようにはなったけれど、階段は上れませんでした」とご主人。自宅は建物の2、3階部分。奥さんのひろみさんは「30キロありますが、ずっと抱きかかえて上ってました」と話す。
そのメローが16歳のとき、今度は口の奥にガンを発症。より介護が必要となったことでどこか預けるところはないか調べたものの、納得できる施設は見つからなかった。
「その当時、大阪市内に老犬の介護ホームは1軒もなく、できればメローと最後まで一緒にいたい、という思いもありました。それならこの場所に、と決断しました。父から譲り受けた印刷業ですが、利益が出ているうちに、と」
施設の開業にあたっては印刷工場として防音設備をしていたのがプラスに。介護にあたっては、これまでメローと過ごした経験が下地になった。
「まずは山の中の一軒家ではなく、便利な大阪市内が喜ばれるだろうと思いました。そうすれば、気軽に会いに来てもらえる。暗い、臭い、ケージに入れっぱなしにしないよう、犬のストレスにならない空間を目指しました」
基準は足腰の弱いメローを預けたくなるような施設。そこで床は滑りにくい素材に。ケージは特注し、木のぬくもりを感じさせるものにした。設置されている肉球型のカギは自身も犬を飼っている大工さんの遊び心だとか。「すべては長年家族として癒してくれた愛犬が楽しく心地よく過ごせるような場所になるよう心がけた」という。
室内は50坪あり、冷暖房完備。真ん中はフリースペースとなっており、中型犬はもちろん、大型犬も伸び伸びと動ける。「預かっているのは20匹前後。最初は戸惑う犬もいますが、元々は群れで生活していたので、みんな仲良くしていますよ」