ツイッターで約43万人(4日時点)のフォロワーがいる「空箱職人はるきる」さんの展覧会「お菓子の箱でつくる夢の世界展」が11日まで東京・池袋のパルコミュージアムで開催されている。神戸在住、21歳の男子大学生だが、なじみのある市販の菓子箱などを素材にした精巧な紙細工のアート作品がSNSで拡散され、新時代の造形作家として注目されている。会場で本人を直撃し、今後の創作活動についても聞いた。
1997年12月生まれ、名古屋出身。現在は神戸芸術工科大アート・クラフト学科に在学中だ。2017年に「明治ザ・チョコレート」の箱でロボットを作ったのを機に「空箱工作」を始めた。今年7月には初の著書も出版。展覧会も今年から始め、神戸、名古屋を経て東京では初公開を含む30点以上を展示している。
例えば、ポテトチップス「プリングルス」のパッケージに記された“ヒゲおじさん”が赤、青、緑、紫、黄の5色に分けられたタイトなスーツに身を包んだ作品。太ももあたりの筋肉を感じさせる起伏や衣服のしわまで、人体の肉感を3次元で表現した。グリコの「坊や」は特撮物のロボットに、不二家の「ペコちゃん」はアイドル風に、その「顔」を生かして立体化。「オレオ」は戦闘機、「リッツ」は翼のあるライオンに。菓子だけではなく、スコッチ・ウイスキー「シーバスリーガル」の銀色の箱からは、欧州の甲冑(かっちゅう)で身を固めた中世の騎士が光沢を帯びて生まれた。
製作時間は作品によるが、展示作は10~20時間ほど。小さい頃から紙工作が好きで、菓子箱に絵を描くことがSNSではやった時期に「僕は絵を描くのじゃなく、立体作品をつくる」と一念発起。現物を見て、脳内で完成図を描きながら手作業する。「ペーパークラフトが好きで、大学もそれが学べるところを選んだ。高校まで名古屋でしたが、それで神戸に住んでいます」という。
SNS時代だからこそ、若くして一気に認知された。17歳の高校3年生だった2015年9月からツイッターを始め、フォロワー数は4日時点で42万9000人を超え、日々、急速に伸び続けている。「いいね」は最大で50万、リツイートは最大10万件。プレッシャーはない?と聞くと、「半端な作品は出せないな、というのはありますが、それよりも楽しく作らせていただいています」と自然体だ。
今後の進路について「卒業後は東京に拠点を移そうと思っています」と明かした。今回展示された日清食品「カップヌードル」の容器を使った宇宙飛行士など企業とのコラボレーションも行なっており、そういう仕事の面からも「東京がいいかと思います」という。さらに「今後、目新しいことで言うと、ユーチューブの動画投稿もここから力を入れて行こうかなと考えています。制作過程のようなものを」と意欲を示した。
会場は老若男女のファンが訪れていた。3次元の作品でもSNSの画像では2次元になるが、会場では3次元で鑑賞できるのが魅力。「SNS等で反響をいただくことが多いですけど、実際にお会いした生身の方から意見をいただけるのはありがたいですね。『いろんな角度から見られてよかった』と言っていただきます」。個展が「ライブ」であることを実感したようだ。
会場ではグッズ、作品に使用されたお菓子が販売されるほか、会期中の9~11日はサイン会も行なわれる。はるきるは「作品と一緒に元の素材となった箱も展示させていただいているので『ここのパーツはここから取ったんだな』とか『ここのパーツはどこに使ったんだろう』ということを、いろんな角度から見て探していただければ僕は一番うれしいですね」と、紙を「貼る」「切る」作業に張り切る。「神ワザ」と評される「紙技」がそこにある。