秘伝レシピで台風被害の農家支援 南仏在住のシェフらが公開

広畑 千春 広畑 千春

 一方、フルプロ農園代表の徳永虎千代さん(27)は今月2日、初めて神谷さんらの動きを知った。農園は千曲川の堤防決壊地点に近く、長野新幹線車両センターの隣にあった畑を始め約4ヘクタールの畑のうち8割が浸水。リンゴは廃棄処分になった。無事だったのは通常の1割ほど。それも暴風で傷が付き、普段よりも「訳あり品」の割合が大幅に増加。梱包資材も水没し、被害額は少なくとも1500万円に上る。徳永さん自身は無事だったが、決壊地点から約2キロの地点にあった父の自宅は深さ2.5メートルまで水没。父はヘリで救助され、今も避難所暮らしを続けているという。

 脱サラして農業を学び直し、曽祖父から続く農園を継いだ。3年前から収穫まで葉を落とさず完熟させる「葉とらずりんご」の栽培に挑戦。糖度を安定させるため、こまめに日当たりの調整をし、ようやく収穫時期を迎えていただけに「絶望的な気持ちになった」というが、シェフらの思いを知り「大切なレシピなのに、本当にありがたい。事業の再建にもつながり、心強い」と話す。

 「このあたりは昔から水害と闘ってきて、水に強いリンゴの栽培が広がった」と徳永さん。今回被害に遭ったリンゴの木も「春には花を付ける」と専門家に言われたといい、「来年からはまた元気なリンゴを届けたい」と前を向く。

 日本では傷がついた野菜や果物は敬遠されがちだが、「フランスではもっと農家との距離が近く、形が悪くても普通に売られている」と神谷さん。台風19号とその後の豪雨で、千葉県でも落花生やレタス、カブ、ネギ、大根、ニンジン、キャベツに被害が出ていると聞き、「そうした商品を買ってくれる人との販路が広がれば、もっと農家も料理人もお客様もハッピーになるのでは」と力を込めた。

 フルプロ農園のリンゴはホームページ(http://www.frupro.jp/)からのほか、「食べチョク」(https://www.tabechoku.com/)で購入できる。

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