「誰か私を拾って」「誰か私にごはんをちょうだい」とでも言おうとしたのか、1匹の小さな子猫がコンビニの駐車場をうろうろしていた。清水さんのご主人は、車にひかれそうになっている子猫を思わず抱き上げた。
コンビニの駐車場での出会い
13年前の晩秋、日に日に寒さが厳しさを増してくる中、長野県のとあるコンビニの駐車場に行き場を無くした子猫がいた。長野県に住む清水さんのご主人は、会社からの帰途、そのコンビニに立ち寄ったのだが、子猫は車から降りた人の足など動くものにまとわりついて、車にひかれそうになっていた。車の往来が激しい通りに建つコンビニだったので、とても危険だった。ご主人は、足にしがみついてきた子猫を抱き上げて保護した。
「子猫を保護した」という電話を受けた清水さんは、中型犬の雑種とミニチュアダックスフンドを飼っていて、はじめての妊娠もしていた。どちらかというと犬派で、少しとまどったが「とにかく寒いし、もういいから早く連れて帰ってきて」と言った。
うちの子になってね
初めて子猫の顔を見た時、清水さんは「うちの子になってね」と心の中でつぶやいた。譲渡しようとはまったく思わなかった。可愛らしくてしょうがなかったのだ。ノミがついていたので、玄関に段ボール箱を置き、中に入れると子猫は正座したまま動かなくなった。2匹の犬にのぞきこまれて、少しおびえているようにも見えた。
翌日、ケージなど必要なものを購入し、動物病院に連れて行った。生後1カ月~2カ月くらいだった。
「ゆめ」という名前は、もう野良猫じゃないから、2匹の犬のように幸せになってほしい、夢や希望を持って生きてほしいという願いをこめてつけた。女の子なので、可愛らしい名前がいいとも思った。
清水さんの祖母の家では猫を数匹飼っていたが、清水さんは猫のことをあまり知らなかった。半年後、発情期が来た時、すごい声で鳴き出したので仰天した。
「本当は発情期が来る前に不妊手術をすればよかったのですが、知らなかったので、なんだろう、なんだろうと思って慌てました。すぐに動物病院で不妊手術をしてもらいました」
専用の部屋を持つゆめちゃん
愛されて育ったゆめちゃんは、自分専用の猫部屋を持ち、おっとりした性格になった。ミニチュアダックスフンドが活発な子で、家の中を走り回ったり、ゆめちゃんのおやつを取ってしまうので、ゆめちゃんは自分の部屋でのんびり過ごすのが好きだ。人にべたべたするわけでもなく、放っておいてという感じなんだという。ドアノブを上手に使ってドアを開けたり締めたりできるので、リビングと自分の部屋を自由に行き来している。
そんなゆめちゃんも今年で13歳。キャットタワーにもあまり登らなくなって、下で寝ていることが多くなった。