片側2車線の道路で交通事故にあった子猫。動けないでいると、偶然、そこを通りかかった江口さんに助けられた。重なる偶然が、まるで運命のように江口さんと猫は距離を縮めていった。
交通事故に遭った子猫を保護
福岡県に住む江口さんは、いつもは会社に行く時、ギリギリの時間に家を出るタイプだが、その日は、なぜか早めに家を出た。2016年9月1日のことだった。
会社に向かって片側2車線の道路を走っていると、右車線の道路の真ん中で何か動くものが見えた。減速したら、それは小さな猫だった。普段は交通量の多い道路だが、その時は車が来ていなかったので、ハザードを出して車を停めることができた。近づくと、子猫はシャーっと言って威嚇した。しかし、後ろ足をケガしていて動けなかったので、逃げられず、抱き上げて保護することができた。
江口さんは、ひとまず子猫を車に乗せて出勤した。一大事だと思った江口さんは、社長に事情を話して、一刻も早く子猫を動物病院に連れて行きたかったが、社長の理解を得られず、車に乗せたまま気をもんだ。昼頃、社長が出かけたので、社長の奥さんが「病院に連れて行っていいよ」と言ってくれた。
子猫のために引っ越し
会社の近くには3軒の動物病院があったが、1軒は休診日、残る2軒も昼休みだった。1軒の動物病院は、具合が悪ければ連れてきていいと言ってくれたので、缶入りのキャットフードを与えても食べないため診察してもらったという。
子猫は、やせていて小さかったが、生後2カ月くらい。車にはねられ、骨盤と後ろ脚を骨折し、出血もしていた。
「今日、生きられるかどうか分からない。元気が出たら手術もできると言われたんです。点滴をしたら翌日は少し元気になったので、手術するかどうか尋ねられました。当時、ペットを飼えないアパートに住んでいたのと、費用も高額だったので迷いました。でも、主人がペットを飼えるところに引っ越してもいいと言ってくれたので、手術をしてもらいました」
甘えん坊の猫に
リリィちゃんと名付けられた子猫は、術後1か月間入院したが、10月3日、無事退院した。
「実家では子供の時から猫を飼っていて、もともと猫が好きなんですが、飼うつもりはなかったんです。でも、偶然、早めに家を出た日に、いつもは交通量が多い道路が空いていて、偶然が重なってリリィと出会ったことに運命を感じました」
今では元気に走り回っているリリィちゃん。とても甘えん坊で、人がいないと部屋にいられない。特に、江口さんに懐いていて、部屋を移動したら必ずついてくる。冬は布団の上で一緒に眠り、夏は、寝室のキャットタワーの上で眠る。
頭が良くて、どうすれば江口さんが起きるのかよく知っている。ニャーニャー鳴くだけでは起こせない。クローゼットを手で叩いて音を立てて起こす。夜はかまってちゃんになるが、食後、お皿を洗っているうちは、絶対に相手にしてもらえないと分かっているので、遠くに座っている。しかし、お皿を洗い終わったと思うやいなや、近づいてきて「遊んで」と言いにくる。
甘えん坊のリリィちゃんが来て、江口さんは、毎日とても癒されるという。