消費税が10%に引き上げられた10月1日、実は「日本酒の日」でもあった。日本酒造組合中央会による「全国一斉日本酒で乾杯」が呼びかけられる中、「日本清酒発祥の地」として知られる奈良では、県内各地の蔵元28社によって清酒が振る舞われる「大和のうま酒で乾杯」が行われ、大勢の日本酒ファンが集った。
午後5時、奈良県酒造組合の倉本嘉文会長の挨拶に始まった今回のイベント、来賓らによる樽酒の鏡開きが行われた後、法被を着たスタッフが、集まった人たちに振る舞い酒のカップを手早く配布して一斉乾杯。各蔵元が自慢の酒を持ち寄った試飲コーナーには行列ができ、用意された酒は乾杯から15分余りでまたたく間に飲み干された。
いわゆる「日本酒乾杯条例」が最初に施行されたのは2013年1月の京都市。奈良でも同年12月に「奈良市清酒の普及の促進に関する条例」が施行され、以後一斉乾杯を行ってきた。日本酒造組合中央会によって「日本酒の日」が定められた1978年から「乾杯条例」成立までの35年間で、清酒の消費量は約3分の1にまで落ち込んだ。倉本会長によると、一斉乾杯のほかにも、フレンチと日本酒の食事会、奈良県東京事務所「奈良まほろば館」での日本酒セミナーや試飲、全国きき酒選手権大会の予選開催など、様々な趣向で日本酒の振興につとめている。
何の因果か、この日は消費税が10%に引き上げられた初日。お酒にも10%の税金が課せられるようになってしまった日に、来賓として鏡開きをしている人の多くが、奈良税務署や大阪国税局の関係者なのは一体なぜ?
不思議に思って酒造組合の方に聞いてみると、酒税法によって定義され課税される日本酒は、一般の食品とは違って財務省の管轄になるとのこと。確かに国税庁のホームページを見ると「お酒に関する情報」のコーナーがあり、国税局主催の日本酒セミナーや清酒鑑評会が開催され、日本酒の振興を後押ししている。しかし。そもそも酒税と消費税を両方取られている日本酒は、軽減税率に入れるべきなのでは!!と思う日本酒ファンとしては、なんだかモヤモヤが残る。せっかくの機会に国税局の方に直接問いただしたかったのだが、鏡開きのあとはすぐに法被を脱がれてしまい、人混みに紛れてしまった。