「怪我が多い」カナダで高校ラグビー部に活動禁止の通告 反論多く数日後に通告を凍結…

谷口 輝世子 谷口 輝世子
アイルランドに勝利し喜びを爆発させる日本代表フィフティーン=9月28日、エコパスタジアム
アイルランドに勝利し喜びを爆発させる日本代表フィフティーン=9月28日、エコパスタジアム

 開催国である日本の快進撃もあって、ラグビーのワールドカップが盛り上がっている。

 ところが、出場国のひとつであるカナダでは、今春、高校でのラグビー部活動が禁止されそうになるという“事件”があった。

 5月はじめ、カナダ北東部の太平洋海沿いのノバスコシア州で、ノバスコシア高校体育連盟が高校でのラグビーを禁じると、各ラグビー部に対して通告した。ノバスコシア州は人口約96万人で、数十校がラグビー部を持っている。高校での女子ラグビーも盛んだ。

 連盟がラグビー部活動の中止を言い渡したのは、他の運動部と比べてラグビー部の活動は怪我の件数が多いというのが理由。しかし、突然の通告にラグビー部員たちはどうしても納得できなかった。

 カナダの地元紙の報道によると、試合の2時間前に禁止の知らせを聞いたウエスト・キングス・ディストリクト高校の女子ラグビー部員たちは、動揺と怒りに包まれながら、すぐさまオンラインで禁止撤回の署名を呼び掛けた。開始から30分で100人の署名が集まり、瞬く間に2万3000人以上の署名が集まったという。

 カナダラグビー協会もノバスコシア高校体育連盟の判断に異議を唱えた。「組織を管轄する誰もがアスリートを守りたいと思っている。そういう意図は良い。しかし、精査なしでアクションを起こすことは間違いである」とした。

 また、カナダラグビー協会は、ノバスコシア高校体育連盟が、ラグビー部の怪我がアイスホッケー部など他の種目よりも明らかに多いと示していることにも疑問を呈した。「もしかしたら、他の種目では報告されていない怪我があるかもしれない。これについても議論したい」と呼び掛けた。

 ラグビー部の活動禁止通告についての反論が多く、数日後にノバスコシア高校体育連盟は活動禁止通告を凍結。2019年の夏休み期間を利用して、医療の専門家、ノバスコシア高校体育連盟、ノバスコシア・ラグビー協会で安全対策再調査するとした。そして、9月はじめ ノバスコシア高校体育連盟の委員による投票で、今シーズンも高校ラグビーを続行することが決まったのだ。

 カナダでは、高校ラグビーを存続させて欲しいというオンライン署名が起こったが、2016年には英国の70人以上の医師グループが、学校の体育の授業で取り扱うラグビーからタックルなどのコンタクトプレーを除くべきとして、働きかけたことがある。

 教育局は学校側にスポーツ活動のリスクについての認識を持ち、子どもたちに安全な環境を提供するように求めているが、学校の体育からラグビーのコンタクトプレーを外すことは決定していない。

 迫力あるラグビーの試合。ワールドカップに出場しているいくつかの国では、学校体育や運動部で怪我のリスクにどう向き合うかも迫られているようだ。

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