スーパーの売り場の裏側はバックヤードと呼ばれるスペースになっていて、売り場に並べる商品の準備のほとんどを行う作業場でもある。そこで働く人たちの大半はパートタイマーの中高年女性たちとアルバイトで占められる。まさにスーパーは「おばちゃん」たちの力によって運営されているのだ。実際に働いてみて分かったスーパーの「裏方」を紹介したい。
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スーパーへ買い物に行くと、壁に設けられたスイングドアが開き、商品を満載したカートが出てきて、作業着を着たおばちゃんが黙々と売り場に商品を補充する。そんな姿を見たことがあるだろう。
売り場の裏側をバックヤードといい、部門ごとに区切られたスペースになっている。惣菜売り場のバックヤードは原料を補完するための冷蔵庫と冷凍庫の他、フライやてんぷらなどの揚げ調理をするフライヤー、蒸し器、オーブン、自動餃子焼き機などの調理機器がところ狭しと並んでいて、そのまま厨房として機能する。パン売り場のバックヤードはベーカリーそのものだし、精肉売り場のバックヤードも小規模な精肉工場そのものである。
筆者が働いていたことがある仮称「港が見えるスーパー」の、惣菜売り場の一部をご紹介しよう。
惣菜売り場で扱う商品は、大きく分けて「寿司」と「フライ」に分けられる。寿司のほかは、たとえ蒸し物や焼き物でもフライの担当になる。
平日は寿司とフライの担当がそれぞれ3人ずつ、全員が近所から通ってくる主婦のパートタイマーかアルバイトである。勤務はシフト制で、毎日2人は公休を取っている。そこにチーフとして社員が1人付いて、作業や追加で補充する商品の指示を出す。
フライ担当のうち1人は揚げ物に専従し、お昼までの勤務時間中はひたすらフライと天ぷらを揚げ続ける。そのフライヤーから揚がってきたフライやてんぷらを片っ端からパック詰めする担当が1人いて、残る1人がサラダをつくったり弁当を作ったり、あるいは餃子やヤキトリを焼いたりと縦横無尽に動き回りながら作業をこなしていく。だから、それぞれにとても忙しい。人数を増やせば1人当たりの作業に余裕がでるのだが、いかんせんバックヤードは狭い。売り場面積をなるべく広く取るために、バックヤードは作業ができるギリギリのスペースに抑えられている。
しかし、年末年始や春のお花見、あるいはお盆とかクリスマスなどの年中行事の時季には、狭いバックヤードに全員が出勤する。なぜなら、それだけ人手が要るからだ。クリスマスイブには、骨付きチキンを1日で2000本焼く。そのための要員や、チキンの加工商品が増えるから、盛り付け作業にも人手がいる。だから全員を出勤させて、総力をあげてクリスマス商戦に当たるのだ。
余談ながら、売り場に出ていない商品が欲しいときは、店員に声をかけてみよう。たとえば「トンカツを揚げてもらえますか」と言えば、在庫があったら揚げてくれるし、切り分けてほしいときは「切ってください」と頼んだら対応してくれる。だから魚介売り場でも、魚を切り身でほしいときは、店員に声をかけたら捌いてくれる。魚介担当の店員はそういった研修も受けているから、遠慮なく声をかけるといい。また惣菜売り場に並んでいるフライも同様に、たとえばトンカツを「6つに切ってください」といえば、バックヤードで切り分けてくれる。