「中学1年の娘の荷物が重すぎてかわいそう。何とかして」。仙台市宮城野区の主婦(45)から「読者とともに 特別報道室」に相談のメールが届いた。生徒にとって重いかばんを背負っての登下校は苦痛の種。成長期の子どもへの負担を懸念する声があり、学校側も対応に苦慮している。
市立中に通う長女(12)のかばんには教科書やノートがぎっしり。参考書やプリントをとじたファイルなきょうどを合わせた中身は計25冊。かばん全体の重さは約12キロにもなった。
「学校は楽しいが、着くまでがつらい。みんなも重すぎると言っている」。長女は登下校時に重いかばんを背負った上に部活動の道具なども持ち、片道1.6キロを約20分かけて歩く。
重い荷物は成長期の児童生徒に悪影響という声が高まり、文部科学省は昨年9月、携行品の量や重さを工夫して軽減するよう全国の教育委員会に通知。自宅で使わない教材を学校に置いていく「置き勉」を認める方針を示した。
長女が通う中学校も通知を受け、学校に置いておける教材や持ち込まずに済む問題集を指定するなど対策を講じた。ただ、長女は「もう少し広いロッカーが欲しい。このままでは荷物が重すぎて姿勢が悪くなりそう」とこぼす。教室に備えられた格子状のロッカーは狭く、置き勉できるスペースはないという。
同校の教頭は「広いロッカーを設置したいが、学校だけの努力では限界がある。重いかばんを背負っている生徒の姿を見ると、私もつらい」と頭を抱える。
◎私立など積極対応も
仙台市教委は今年4月、市立の全小中学校を対象に「置き勉」の実施状況を調査した。実施校は全184校中171で、教員が各教科で教材を指定していた。文科省の通知があった昨年9月以降、ロッカーを新設した学校はなかった。
子どもを青葉区の市立中に通わせるある母親は「学校に教科書を置くスペースは限られ、置き勉を許可されている教材はわずかだ。状況は変わっていない」と指摘する。
仙台市内では、私立を中心に置き勉を積極的に取り入れている中学校がある。
宮城学院中(青葉区)は10年以上前から、生徒の荷物の軽減化に取り組んでいる。教室にロッカー室を併設し、生徒一人一人に部活動の道具を収容できる鍵付きロッカーを与えている。
丸山仁教務部長は「両手は何も持たず、リュック一つで学校に来ることを目指している」と話す。家庭学習の内容や時間を想定し、必要最低限の荷物で登下校するよう指導するという。
宮城教育大付属中(同区)では置き勉の教材を指定していないほか、教室のロッカーやその上に部活動の道具なども置いて帰るよう呼び掛けている。放課後は教室を施錠するなど盗難防止を徹底している。
脊椎外科と小児整形が専門の仙台西多賀病院整形外科の両角(もろずみ)直樹副院長によると、重い荷物で背骨が変形し姿勢が悪くなることはないが、腰痛や肩凝りの原因になる恐れがあるという。
個々の体格や体力の違いにも配慮が必要だ。両角副院長は「体力に見合う重さにするため、積極的に置き勉を活用するのも一つの手段。大人は知恵を絞り、重い荷物から解放してあげてほしい」と提言する。
(宮崎伸一)
(河北新報「読者とともに 特別報道室」から)
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