野球部創設で若手人材確保…建設会社が「夢追えるステージ」を提供する理由

広畑 千春 広畑 千春

 斉藤さん自身、横浜商科大学高を卒業後18歳でオリックスに入団した時、プロ初の春季キャンプでいきなり壁にぶつかった。先輩たちとの実力差を思い知らされ、体重は10キロ近く痩せた。「どうやったらこの世界で生きていけるかばかり考え、必死で人間関係の壁や技術の壁を越えてきた。今の子は知識も豊富で体も大きい。後は自分で乗り越える力を鍛え、プロという夢に近づけるようにしたい」と語る。

 今、選手らは午後5時ごろまで現場で働き、会社で夕食を取った後、近くの少年野球チームのグラウンドを借りて、約2時間の練習に励む。決して恵まれた環境とは言えないが、選手らの意識は高い。佐藤雄大投手(23)は大学1年から先発として活躍していたが、その後イップスを発症。最後の試合も投げられなかった。「だからこそ、まだ伸びしろがあると信じたい。終わりたくない」。桐蔭横浜大で全国大会出場経験もある渡辺太樹主将(22)は「もう野球をするのは無理だと思っていたが、チャンスをもらった。現場の業務は正直しんどいけれど、来年は大勢新人も入るし、仕事も野球もしっかりやりたい」と力を込める。

 とはいえ費用もかさみ、社内でも「うちのような中小企業が、今やるべきなのか」(幹部)と懐疑的な声もある。だが、それを変えるのも「結果」だ。夢で終わるのか、それとも新たな企業スポーツの可能性をひらけるのか。目標は「日本選手権への出場」と斉藤さん。道のりはまだ、始まったばかりだ。

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