あおり運転の心理とは 「イライラ」「自覚がない」「過剰な防衛反応」

中村 大輔 中村 大輔
加害者への心理教育では、対話を用いて、言葉遣いや気持ちの整理の仕方を改善させることがポイント(tkyszk/stock.adobe.com)
加害者への心理教育では、対話を用いて、言葉遣いや気持ちの整理の仕方を改善させることがポイント(tkyszk/stock.adobe.com)

あおり運転や暴力事件のニュースが相次いでいます。こうした一連の様子を見聞きしていると、運転や外出を控えようという方も出てくるかもしれません。どうすればこうした暴力行為を防ぎ、自分の身を守ることができるでしょうか。

ある傷害事件を起こした加害者は、日常からゲームで暴言を吐いたり、壁や物に当たったりしていました。次第にエスカレートし、思い通りにいかないと、些細なことに対してもイライラするようになり、通行人とトラブルとなってしまいました。

こうした加害者への心理教育では、対話を用いて、言葉遣いや気持ちの整理の仕方を改善させることがポイントとなります。

元来、動物や昆虫などの生物は、自らの利害が対立したときに攻撃的な本能に基づいて力を使います。人間も動物の一種であり、例外ではありません。しかし、人間は抽象的な概念を用いて腕力の代わりに言葉を使うことができます。そのため、言葉や知識などを巧みに使う人ほど多面的な力を手にすることができます。

言語が未発達な子供であれば、自分の感情を適切に表現して整理をすることができずに、友達同士での喧嘩となることもあります。青年期になると、著しい心身の発達に対して、言語の発達が追い付かずに行動化を起こしてしまうことも珍しくはありません。こうした時期には、歌やダンス、絵といった媒体で感情を表現する方法も有効となります。

これらのことから、暴力行為が身近で見られたら、短期的にはその原因や感情を聞き取り、長期的には読書や日記などの言葉による表現学習を促し、歌や詩などの創作活動を取り入れることも感情のメンテナンスとなるでしょう。

一方、「つけられている」「にらまれている」など、本人の主観的なストーリーの中での過剰な防衛反応として攻撃的な行為を起こしている場合があります。こうしたケースでは、自分にとって意味のある部分にのみフォーカスして怒りを表出し、パニック状態に陥ることもあるため、何に不安を抱き、防衛しようとしているのか、全体的な背景を観察し、対策を講じることが大切です。

また、こうしたケースでは自分一人では中々状況を脱しにくいため、「自分が何をやっているのか」「今後どうなるか」を客観的に気づかせてくれる人の存在も重要です。

さらに、他罰的な考えや被害的な考えが強く根付いてしまっているケースもあります。

ある加害者は「あおり運転をしている自覚はなかった。自分のペースで走りたいから、道を譲ってくれと思っていた」と話しました。

車の中では相手と直接会話ができないため、思いやりの気持ちが大切になります。この加害者には被害者感情の理解を促す心理教育課題を実施し、「今は被害者の人の気持ちが分かるようになったので、後ろに来られたら、怖いだろうなと、その人の気持ちが分かるようになりました」と語りました。

電車やバスで並んでいても、「邪魔だ」「早く行け」と言われて気分を悪くすることもあるでしょう。言葉は人間社会では人を傷つける武器にも安心させる癒しにもなります。一人一人が思いやりを持って、お互いを尊重し、譲り合う気持ちを持ち続けることが大切です。

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