猫同士の関係はうまくいかなかったが、人間につらい目に遭わされてきたにもかかわらず、ポン太は人間好き。最初から怖がることなく一家になじんだ。ただ、虐待の後遺症か、情緒不安定な面があり、ブラシをかけられて気持ちよさそうにしていたかと思うと、突然、唸りだしたり、甘噛みしたりもあるという。足腰も弱くジャンプ力もない。高い所からも飛び降りられず、ワンクッション入れるのが常だという。
「うちに来て7年ぐらいだけど、一体、何歳なのかな…。面倒くさいヤツ。だけど、かわいい。でも、かわいそうというか、申し訳ない気持ちもある。あんな目に遭ったのに、人間嫌いにならずにいてくれてありがとうって思う」
せめて、ここでは心地よく暮らしてほしい。それが一家の願いだ。隔離された部屋の中には小さな屋根付き一戸建てが置かれ、夏はエアコンの風が優しくそよぎ、冬は湯たんぽが置かれて、と至れり尽くせり。そんな「お城」でのポン太の一番のお気に入りは、同じ部屋で暮らす息子さんのおなかの上。「私が抱っこして、なぜなぜしてもゴロゴロ言わないけど、夜は息子のおなかの上にチャンピオンベルトみたいに乗っかってゴロゴロ言ってるらしい」。玲子さんはうれしそうに教えてくれた。
(デイリースポーツ・若林みどり)