歩けなくなり捨てられたミニチュアダックス 今は里親と“同伴出勤”する究極の甘えん坊

岡部 充代 岡部 充代

 ルカ君の分離不安症はなかなか手ごわいものでした。分離不安症の犬は、家の中でも常に飼い主の後を付いて歩き、飼い主が外出してひとりぼっちになると不安が募って、無駄吠え、食糞、自傷、粗相などの問題行動をしてしまったり、体調を崩す場合もあります。渡邉さんは、先代犬をかわいがり、預かってくれることもあった親戚に協力をお願いして、ルカ君を正式に迎えることを決めました。

 しかし…そこからルカ君の分離不安症は悪化してしまいます。渡邉さんがお風呂やトイレに入ると、ドアを開けて確認しに来るほど。相談した犬の幼稚園もお手上げ状態で、警察犬訓練所には「治せなくはない」と言われましたが、かなり厳しい訓練を強いられそうでした。「それはルカには向かないと思った」という渡邉さんは、上手に付き合っていく道を選択します。

 

 仕事をしている限り、留守番をゼロにはできません。そこで“同伴出勤”を思い付きました。幸い、勤務先は実家の会社。融通は利きます。ルカ君は毎日、マナーベルトをして出勤し、渡邉さんのデスクの下で帰宅時間が来るのを待っているそうです。

 とはいえ、仕事以外にも買い物など、外出せざるを得ないことがあるのではないでしょうか?

「長時間になるときは親戚に預けますが、30分から1時間程度なら“犬用防音ハウス”を買って試しています」(渡邉さん)

 痴呆症になり、昼夜を問わず吠えてしまう犬などのために開発された商品です。それでも心配なので、渡邉さんはできるだけ早く用事を済ませて帰ってくるそう。分離不安症の犬との生活はなかなか大変ですが、渡邉さんはルカ君との生活を楽しんでいます。

「こちらが想像もしないような奇想天外な行動をしてくれるので、楽しいですよ」

 そんな風に言ってくれる“お母さん”に出会えたルカ君は、本当に幸せです。取材中、ずっと渡邉さんの膝の上にいたルカ君。時々、顔を見上げては、「お母さん、まだ? 早くおうちに帰ろうよ!」と言っているようでした。

■取材協力=保護犬ふれあいカフェGUARDIAN

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