チョボ君はMRI検査等受けていないので、両前足が麻痺した本当の原因は不明のままですが、神田先生の見立ては「頸椎のヘルニア」。西洋医学では手術以外に治療法はないとされていますが、鍼治療と漢方薬の併用により、開始から約9カ月後の18年1月、再び歩けるようになりました。
「インターネットでいろいろ調べていたら、『鍼治療を始めて9カ月で効果が出てきた』と書いている飼い主さんが何人かいて、期待していたら、チョボもそうだったんです」(大上さん)
もちろん、その期間は年齢や症状にもよりますし、残念ながら劇的な変化が見られない場合もあるでしょう。それでも、取材をして感じたのは、夏の体調管理に適した食べ物のアドバイスをもらったり、家庭でできるマッサージ方法を教えてもらったり…飼い主がペットの病気とポジティブに向き合える要素が、一般治療に比べて多いのではないか、ということでした。
「飼い主さんが病気のペットを見て、ただただつらいと感じるのではなく、しっかり向き合うことで、充実した時間を過ごせるようになります。そうすれば、ペットにもいい影響が出る。動物もヒトと同じで『病は気から』。ペットの心は飼い主に依存していますから、その精神状態に大きく左右されます。動物の持つ力、飼い主の力、そして治療――3つがそろって初めて改善が望めるのです。西洋医学と東洋医学を切り離して考える必要はなく、鍼治療や漢方薬によって免疫力が上がれば、一般薬の効果が上がることも期待できるんですよ」(神田獣医師)
愛するペットが病気になったとき、どこまで検査するか、治療するか、手術を望むか…飼い主が考えるべきポイントはいくつもあります。その際、年齢や体調を考慮して、鍼治療や漢方薬など東洋医学も選択肢に加えることができれば、ペットとともにより良い生活を送れるのではないでしょうか。