邦画で性描写が減る理由とは?ロマンポルノを支えた脚本家・荒井晴彦に聞く

石井 隼人 石井 隼人
映画『火口のふたり』脚本・監督の荒井晴彦(撮影:石井隼人)
映画『火口のふたり』脚本・監督の荒井晴彦(撮影:石井隼人)

そんな逆風の中で手を挙げたのが、柄本佑と瀧内公美。インモラルな性愛関係を大胆に表現する。佑の父親・柄本明(70)は、荒井監督の映画監督デビュー作『身も心も』に出演するなど同志ともいえる存在。

佑について荒井監督は「頭の回転も速いし、父親と同じ天才肌。こちらの意図をすぐに理解して体現してくれる」と大絶賛で「佑はこれまでトップとして使われる機会がなかったけれど、去年の仕事で主演男優賞をもらって主演の風格が出てきた。そのタイミングもあったし、年齢が原作よりも若く設定されたことで作品がポップになった」と手応えを得ている。

映画『彼女の人生は間違いじゃない』で数々の賞を受賞した瀧内はオーディションで抜擢。「オーディション参加者の中には『本番をしてもいい』と言ってくれた女優もいたけれど、瀧内のサバサバしているところに惹かれた」と起用理由を明かし「現場の雰囲気から構えないで普通にいればいいと察してくれたようで、芝居というよりも素のままでいてくれた」と勘の良さを指摘する。

食べて、寝て、お互いの肉体を求めあう。ただそれだけ。ゆえに荒井監督はリアリティを目指した。中でも食事をしながら会話する場面は興味深い。咀嚼しながらの演技で聞き取れないセリフもある。そのやり取りが妙にリアル。

「映画ってどうしてひとりが喋り終わるのを待って順番に台詞を喋り、しっかりと聞き取りやすいように喋らないといけないのか。それに対する疑問が昔からあった。日常会話では言葉はかぶさるし、食べているときは聞き取れないことだってある。リアルだとそうなるので、それを今回の映画で実践した」と細部にもこだわりを見せる。

表現の自主規制が横溢する時代。『火口のふたり』がエロスの限界に挑んだ意欲作であることは間違いない。

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