神戸・元町のミニシアター「元町映画館」が8月、9周年を迎え、いよいよ大きな節目の10年目に突入する。1スクリーン66席(+車椅子1席)の小さな劇場ながら、硬軟織り交ぜた独自のラインアップと、トークショーや出演者の舞台挨拶など積極的なイベント展開で気を吐き、着実にファンを増やしてきた。毎年恒例の「周年企画」として、8月17日~23日には「山形国際ドキュメンタリー映画祭傑作選」を開催。同映画祭の30年の歴史の中から、選りすぐりの5本を上映する。
作品の選定は、同館の創立者でオーナーの堀忠さん(66)が担当。長年医師として働き、昨年定年退職した後も非常勤医師を務めている。そのかたわら、1997年から同映画祭に何度も足を運び、数々の作品に触れてきたという映画ファンでもある。
ドキュメンタリー映画の魅力について、堀さんは「第一は、作家ではなく事件や人物の魅力に直接触れられるということではないでしょうか。第二には、専らお金の量に代表される制作者の権力の大きさと作品の出来がフィクション以上に一致しにくい、ということがあると思います」と語る。特に今年の10月で30周年を迎える同映画祭は、世界中の秀作ドキュメンタリーを紹介する隔年イベントとして国内外で知られる。今回の企画で上映する「要塞」が9年前に同館のオープニングを飾ったという縁などもあり、コラボ企画が実現したという。
開業から半年ほどは、観客が1日50人程度という苦しい状況が続いた同館。立ち見が出るなどの手応えが感じられるようになるまでは1年を要したという。「映画館が持つ『公共性』を理解してくださる方々の支えで、ここまで続けることができた」と感謝する堀さん。「次の10年、さらには20年を見据え、これまで以上に支援の輪を広げていきたい。あとは、建物のメンテナンスもそろそろ考えないと…」
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傑作選の上映作品は次の通り。
■「スクリーンプレイ:時代」
(監督:バーバラ・ユンゲ、ヴィンフリート・ユンゲ/1993年/ドイツ/35mm/284分)
■「阿仆大(アプダ)」
(監督:和淵(ホー・ユェン)/2010年/中国/BD/145分)
■「殊勲十字章」
(監督:トラヴィス・ウィルカーソン/2011年/アメリカ/BD/62分)
■「要塞」
(監督:フェルナン・メルガル/2008年/スイス/35mm/105分)
■「革命の歌」
(監督:ヨウコ・アールトネン/2006年/フィンランド/35mm/80分)
上映スケジュールや料金などは、元町映画館の公式サイトで。
https://www.motoei.com/index.html