東京・新宿で半世紀近く、虎のお面とド派手な衣装で雨の日も風の日も自転車で新聞を配達してきた「新宿タイガー」と称される男性のドキュメンタリー映画がロングラン上映中だ。名古屋に続き、同じ虎は虎でも、阪神タイガースの地元である関西での上映が決まった。本人を直撃し、その思いを聞いた。
映画「新宿タイガー」は女優・寺島しのぶがナレーションを務め、映画館と酒場と女性を愛する新聞配達員の日常を通して「新宿」という街を描く。3月22日からテアトル新宿でレイト上映が始まり、初日は立ち見が出る満員札止め。純粋に映画が好きで“ノーギャラ”で出演した主役は「お金よりも夢とロマン。ラブ&ピース」を掲げ、週2回ペースで舞台あいさつに立つ。ロビーでは記念撮影の行列ができている。
新宿タイガーは1948年2月1日生まれの団塊世代。長野県出身で本名は原田吉郎さん、71歳。1972年、新宿の神社の祭りで目に留まったタイガーマスクのお面を「直感で」かぶり始めた。
街で声をかけても(男性は)スルーされがちだが、心を許すと冗舌な人(虎?)になる。昨秋、記者は酒場でウーロン茶を頼んだ際に、隣席の新宿タイガーから「お茶だって!?お前は利休か!市川海老蔵の『利休にたずねよ』か!!」と突っ込まれて“リキュウ”と命名された。師走に映画公開の第一報が掲載された日には「文豪!今日だけは…」と握手されたよしみで、平成最後の春に、利休ではなく、虎にたずねた。
「関西はタイガースだけど、新宿のジャングルから出てきた虎もどう猛ですよ。デイリーの1面じゃないけど(ヒットしたら)虎のしっぽだよ!阪神と一緒で、今年の虎は熱いよ。ほんとだよ~」
大阪では12日からシネリーブル梅田で上映され、九条のシネヌーヴォでも予定。新宿虎は「大阪といったら(中村)錦之助ちゃんと(美空)ひばり様が共演した映画『千姫と秀頼』の舞台だからね。最高ですよ!夢に酔いしれてください」とPRした。神戸・元町映画館(5月25~31日予定)と京都・出町座でも順次公開される。