連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)は3月24日からの放送がいよいよ最終週となる。この作品の生みの親・脚本家の根本ノンジさんが取材に応じ、約2年間におよぶ制作期間を振り返りつつ、最終週の見どころについて話した。
偉人ではない主人公・結の「日常」を大切に
「『おむすび』という物語を書くにあたって最も大事にしたことは?」という質問に根本さんは、
「朝ドラの使命としてはやっぱり、広く多くの方に伝えるエンターテインメントであるべきだと思いますし、朝の爽やかな時間に流れる作品であるということは強く意識しました。この物語の主人公・米田結(橋本環奈)は、歴史に名を残すような偉業を成し遂げた人でもなければ、特殊な才能を持った人でもない、平凡な1人の女性です。その結がいろんな経験を経て、いろんな出来事と向き合い、悩みながら少しずつ変わっていく。誰もに起こりうるそうした“日常”を大切に描きました」
「平成史を振り返るならば避けては通れない阪神・淡路大震災、東日本大震災、そして令和に入ってすぐのコロナ禍。これらをどうやって描くべきかについては、スタッフ皆でたくさん議論しました。理不尽な災害に直面したときに、人間はどう向き合い、どうやって生きて、前に進もうとするのかということを描きたいと思いましたし、向き合ってきたつもりです」
と語った。
説教臭くなく、親しみやすい形で「利他の心」をテーマに
また、ドラマ全編を通じて何度となく登場した「米田家の呪い」という言葉については、
「端的な言葉にするならば、『利他の心』というんでしょうか。自分よりも人のことを優先するという思い。これをまず大きなテーマとして掲げたかったという思いがあります。でもそれをお説教っぽく大上段に構えるのではなくて、親しみやすい言葉で、ちょっと楽しく言い表せないか。そんな思いで『米田家の呪い』という言葉を使いました」
「目の前に困ってる人がいたら助けるのは当たり前なんだけれど、やっぱりみんな、どこか照れ臭い気持ちがあると思うんです。電車の中でお年寄りに席を譲るのだって、少し勇気が要ったりして。だけどこの言葉なら『よし!自分は人助けする呪いにかかっているので、席を譲ろう!』と思えるんじゃないかと。そんなささやかな優しさが日常の中に広がっていけばいいな、と願って脚本を書きました」
と根本さん。最終週の見どころを聞くと、こう話した。
「第1回から結が言い続けている『美味しいもん食べたら、悲しいことちょっとは忘れられるけん』という台詞が、最終週ではさらに大事な意味を持ってきます。『米田家の呪い』と称しながら、困った人に何ができるかを問い続けてきた結、歩(仲里依紗)、聖人(北村有起哉)、愛子(麻生久美子)が、最終週でどういう決断をするのか。それが、このドラマを半年ご覧になってくださった視聴者の皆さんにとって、ご家族やお友達との会話のきっかけになってくれたら嬉しいです」
◇ ◇
・『おむすび』番組公式サイト