都営地下鉄ホームで表示された「謎の暗号」が話題に 東京都交通局に「真相」を聞いた 

北村 泰介 北村 泰介
都営地下鉄のホームにある旅客案内表示器に突然出現した「謎の暗号」。目撃者がSNSに投稿して話題になった
都営地下鉄のホームにある旅客案内表示器に突然出現した「謎の暗号」。目撃者がSNSに投稿して話題になった

 都営地下鉄大江戸線の駅ホームにある旅客案内表示器に「CPU」や「FPGA」といったコンピューター用語が登場した瞬間をとらえた画像がSNSに投稿されて話題になっている。一体、これは何なのか?実際に各駅のホームを巡って表示器を確認した。容易に確認することはできなかったが、都営地下鉄を運営する東京都交通局を取材した結果、原因が判明した。

 行く先と時刻が示されるはずの掲示板に「CPU Ver:2.1」と「FPGA Ver01.03」という表示が出た画像は7月3日に投稿された。CPU(中央演算装置)とはパソコンなどの頭脳となる部品で、FPGAは日本語に直訳すると「現場でプログラム可能なゲートアレイ(集積回路の製造手法)」とのこと。とにかく、コンピューターの「大事な所」なのだろう。

 コメント欄には「起動時にCPUのソフトウェアバージョンとFPGAのイメージバージョン表示してるのかな?」といった、分かる人には日常会話的な内容なのだろうが、アナログな記者には暗号のような言葉が書き込まれていた。まとめサイトでは「大江戸線の電光掲示板が謎の自己紹介をしていると話題に」という見出しで特集された。

 そこで、記者は同沿線で複数の駅を巡回した。ホームの旅客案内表示器(いわゆる電光掲示板)を愚直に凝視し続けるという「大江戸線巡り(苦行とも言えるが…)」を半日かけて敢行したのだが、そんな表示は出て来やしない。困った。

 投稿者に伝えると、「機材やシステムのテストないしはトラブルで、たまたま表示されたのだと思いますので、駅に行って眺めていてもこの表示を再度目にすることは基本的にはないと思います」と指摘され、己の不明を恥じた次第。極めてレアなケースなのだった、ということを徒労の末にようやく理解した。

 さらに、投稿者同士の情報交換により、複数の駅(ちなみに汐留と六本木)で同日に同じ表示が出たことが分かった。投稿者は「特定の機材が故障で普段見ない表示になることはありますが、他の駅でも同じ表示があったということは、運行管理システム側でシステム更新などの何かがあったのでは」と推測。その仮説をもって、東京都交通局に聞いた。

 -この表示が出た時は何か作業をしていたのですか。

 「ホーム上の旅客案内表示器に多言語表示等を行う目的で表示器のファームウェア改修を実施していました。改修作業中は調整中の表示を出しておりましたが、ファームウェア改修実施後に確実に実施されているかどうかを確認する手段としてバージョン表示を行いました」

 -この表示が出た理由は。

 「旅客案内表示器において各種機能改修を実施しております。更新及び改修の内容により、旅客案内表示器内に実装しているCPUとFPGAのどちらをバージョンアップするかが異なり、バージョンアップの頻度が異なります。その結果、CPUとFPGAのバージョンが異なることとなっております。今回のツイッターに投稿された写真の通り、ソフトのダウンロード後に適切なソフトのバージョンがインストールされているかを確認する為に表示させていたものです」

 結論。「多言語表示」のための改修作業において、ソフトをコンピューターシステムに導入し、使えるように設定する過程で出た表示だったということだ。そして担当者は「必要な作業の一部であることをご理解ください」と念を押した。車両を何台もやり過ごしながらホームに立ち続けるという無駄な時間を経て、ようやくたどり着いた「真相」に快哉を叫んだ。

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