大阪府警は住民の安全より自分達の威信を重視した

北村 晴男 北村 晴男
近鉄富田林駅近くの掲示板に張られた樋田淳也容疑者の顔写真入りのチラシ=8月14日撮影(提供・共同通信社)
近鉄富田林駅近くの掲示板に張られた樋田淳也容疑者の顔写真入りのチラシ=8月14日撮影(提供・共同通信社)

 大阪府警富田林署から勾留中の無職樋田淳也容疑者(30)が逃走した事件は発生から2週間以上が過ぎた。府警は加重逃走容疑で同容疑者を全国に指名手配して捜索を続けているが依然、行方はつかめていない。容疑者が警察署から逃亡するという前代未聞の事件。日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士に問題点を聞くと、大阪府警から住民への発表が遅れ、事件発生の翌朝になったことを重大視。「自分たちの威信を重視し、住民の安全を軽視したのでは」との見解を示した。

情報がなければ住民は防御できない

 北村弁護士は「最初、この事件を聞いた時に最も疑問に思ったのは住民への発表の遅れです」と述べた。樋田容疑者の所在が不明になっていると府警が認識したのが12日午後9時45分ごろ。報道機関に情報提供したのがそれから約3時間後だった。メール配信サービスで住民に警戒を呼びかけたのは逃走発覚から約9時間後となる翌朝13日午前6時半ごろだった。

 北村弁護士は「逃走が判明し、せいぜい30分も探して見つからなければ報道機関に発表すべき。情報がなければ住民は防御できない」と付近住民が身構える情報もなく、深夜から早朝という一日で最も無防備な時間帯に長時間、危険にさらされたことを問題視した。北村弁護士は「警察は警察の威信を重視し、住民の安全を軽視した結果ではないか。住民の安全確保をほとんど念頭に置いていないようにさえ見えてしまう」と府警が本来、最も重きを置くべきものを見誤っているのではないかと指摘した。

 発表を遅らせた府警側の思惑としては、すぐに捕まえれば逃走はなかったこととしてあわよくば発表せずに済ますことも事実上可能であり、内部処理だけで済まそうといったことが考えられる。ただでさえ不祥事が多い大阪府警が、自分たちがこうむるダメージを少しでも減らそうと住民の安全よりも組織防衛を優先的に考えたことが透けて見える。

 北村弁護士は府警の問題点をさらに指摘。富田林署の接見室のアクリル板が簡単にはずれた事態に、「こんなことは考えられない」と同署のずさんさにあきれた。アクリル板がはずれれば今回のように容疑者の逃走や、接見に来た弁護士が襲われるなど大変な事態が起こりうる。そのため、「アクリル板が固定されているかどうか定期的に物理的な方法で点検するのが当たり前」と北村弁護士は述べた。しかしながら、富田林署では目視程度で済ませていたことが判明している。同署の接見室のアクリル板は3枚のうち1枚が金属製の枠からはずれていた。樋田容疑者はこれを押し破って逃走したとみられる。

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