名古屋市西区にある、2階建てバスの保護猫カフェ「ひだまり号」による初のチャリティー絵本「わたし アトム」(三恵社)が完成しました。絵本は、猫が繁殖しすぎて飼いきれなくなった「多頭飼育崩壊」の現場からレスキューされた保護猫のアトムちゃんの物語です。
今回手掛けた絵本について、「ひだまり号」を運営する祖父江昌子さんは「名古屋市の動物愛護センターから譲り受けたアトムは、『ひだまり号』第1号の保護猫です。保護された当時はガリガリにやせていましたが、私たちのところに来てからたくさん食べるようになって、卵のようにまんまると大きくなりました。今は里親さんのところで幸せに暮らしています。そんな不幸だった猫が幸せをつかむまでのストーリーを描きました。多くの方に読んでいただきたいと思います」と話しています。
名古屋の市営住宅で起きた猫の「多頭飼育崩壊」
アトムちゃんが保護された多頭飼育崩壊の現場は、名古屋市北区の市営住宅。メディアの報道などによると、ペットの飼育が禁止されていたのに、住民は2017年の入居当初から室内で多数の猫を飼育し、近隣の人から苦情を寄せられていたとのこと。市は訪問したり、電話を掛けたりして住民に対応を促しましたが、改善が見られなかったため、翌年の2018年1月に提訴。住民側は争わず、6月強制退去となったといいます。
昌子さんによると、現場からレスキューされたのは約45匹の猫。市動物愛護センターの職員らが立ち入り調査やレスキューなどに乗り出した際には、散乱したふん尿などのため室内に臭いが充満、目も開けられないくらいの異臭が漂っていてたそうです。
現場について「時期的に繁殖シーズンでしたので、子猫がいてもおかしくなかったのですが、子猫は1匹も見当たらず。成猫の死体はあったようですが、おそらく子猫たちは餌にされたのだろうという話でした。また、妊娠していた猫も数匹おり、保護されたあと、動物愛護センターで出産したと聞きました」と昌子さん。
さらに「6月は収容される子猫が多い時期でしたから、当時愛護センターはほぼ満員状態でした。なので、犬を収容する犬舎に一部の猫をケージに入れて収容するような手段を取っていたそうで…実は、45匹の猫を全て助けるのは難しい状況だったんです」と振り返ります。
殺処分から免れた猫たち…その1匹がアトムちゃんだった
しかし、当時「多頭飼育崩壊」が広く報道されたことが猫たちの命を救うことになったといいます。それは愛猫家だという松井一郎・前大阪府知事(現・大阪市長)から河村たかし名古屋市長へ送られた1本のメールでした。
「殺処分してくれるな…」
松井・前知事の要請などもあり、保護された猫たちを「猫に罪はない。殺処分しません」と明言したという河村市長。殺処分しないよう指示しました。こうして市動物愛護センターの職員たちは、保護ボランティアなどに猫たちの譲渡を呼び掛けたそうです。
殺処分から免れることができた猫のうちの1匹だったアトムちゃん。2018年7月、昌子さんたちのところに迎え入れられたのです。
「アトムは当時1歳ほど。私のひと目ぼれでした。愛護センターに足を運んだ際、目が合って、じっと目を背けずに私の顔をみてくるんです。この子にしよう!とピンときました。そのころは、まだ保護猫カフェの開店前で2階建てバスの改装中。でも、2階の猫の触れ合いルームだけ先に完成していたので、アトムを引き取ったあと、触れ合いルームがアトムのお部屋に。その翌月の8月、無事にひだまり号をオープンすることができました」
アトムちゃんは、保護猫カフェ「ひだまり号」の保護猫第1号に
アトムちゃんを“保護猫第1号”に迎えた保護猫カフェ「ひだまり号」は、市の動物愛護センターから引き取った猫を中心に行き場をなくした猫たちの命をつなぐ“場所”となったのです。
現在、祖父江さん夫妻が運営する「ひだまり号」と自宅シェルターには合わせて50匹近くの猫がいます。アトムちゃんは「ひだまり号」で活躍後、昨年5月に里親さんが見つかりました。
そんな幸せをつかんだアトムちゃんの“物語”を描いた絵本について、昌子さんはこうメッセージを送ります。
「今回アトムの絵本を作ったのも、本を通じて不幸だった猫たちも『幸せになれるはずだよ』というメッセージを送りたいと思ったから。今ではいろいろなところで動物の多頭飼育崩壊が起きています。こうした飼育崩壊の現場で不幸な猫たちを救えるのは、たくさんのボランティアさんの陰の力があるからこそ。ボランティアさんたちにエールを送るとともに、アトムと同じような場所で生まれた猫たちも幸せな家族が見つかりますよう願っています。多くの方に手を取ってもらえたら幸いです」
アトムちゃんの名前は、元飼い主から付けられたもの。そのまま名前は引き継がれました。多くの人から助けられたアトムちゃん、今は4歳に。里親さんのところで幸せに暮らしています。
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人気バンドflumpoolのドラマーが「わたし アトム」を推薦!
今回、人気バンド「flumpool(フランプール)」のドラマー・小倉誠司さんから推薦コメントをいただいたそうです。昌子さんによると、小倉さんは数匹の猫と暮らす愛猫家。ライブで訪れた土地では必ず地元の保護猫カフェを訪れるといいます。過去に「ひだまり号」にも足を運んだとか。昌子さんは「先日、名古屋のライブがあって、小倉さんが絵本を取りに来てくださって。『すごいいい絵本ですね。ありがとうございます!』と喜んでいただけましたよ」と話してくれました。
「わたし アトム」の絵は、祖父江夫妻の娘さんが担当。文章は昌子さんが書かれて、娘さんと一緒に手直しをされたとのこと。Amazon、書店などでは、7月10日より販売開始ですが、「ひだまり号」ホームページでは先行販売(100部)しています。2640円(税込)。代金の一部は、ひだまり号の保護猫たちのために使われます。
購入は、HPのトップ右上の「支援のお願い」をクリックし、注文フォーム(https://hidamari-cat.com/subscription/)から。
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【保護猫カフェ「ひだまり号」】
〒451-0015 愛知県名古屋市西区香呑町(こうのみちょう)3-74
TEL 052-522-6295
▽HP:保護猫カフェ「ひだまり号」
https://hidamari-cat.com/
▽Twitter:「保護猫カフェひだまり号(公式)」(@hidamarigou)
https://twitter.com/hidamarigou