平成30年度「犯罪白書」によると、高齢者の刑法犯検挙人員では、窃盗について70歳以上の増加が著しく、65歳以上の再犯者率は上昇しています。また、微罪処分は全年齢では近年減少していますが、高齢者率は過去20年増加しています。高齢者の窃盗の原因はさまざまだと思われますが、高齢者の認知機能や生活について理解し対策を考えることは、本人や家族、地域社会の住人にとっても安心安全な生活環境を作る上でとても大切なことです。
対応策を考えるには、まず原因を確認することが大切です。認知症なのかどうか、そうであればどのようなタイプのものかを確認することは、今後の治療や支援を考えるうえでも大切でしょう。また、生活の仕方や家事の出来具合に変化がないかを確認することも大切です。軽度な記憶力の低下や計算力が低下では、その場の会話では目立っておかしなところは感じないかもしれませんが、通帳や現金の管理が難しく、見通しもつけにくくなる場合もあります。
どこも変わりはないように見え、所持金や預貯金にも余裕があると周囲が感じても、本人は節約をしたい、手元のお金を減らしたくないという思いから、万引きをしてしまう場合もあります。常識的に考えると、手元の現金の使用を節約するには、窃盗で捕まることは大きすぎるリスクであり、その判断を理解することは難しいものです。しかし、例えば仕事をリタイアしたり、将来に漠然とした不安があると少しでもお金を残したいという気持ちが起ることも想像できます。生活の変化やこれからの見通しを理解し、サポートすることが必要です。
お元気で歩ける方であれば、家族にとっては万引きなどを起こすと、その後の独り歩きが心配につながるかもしれません。だからといって、家の中に閉じ込めることは高齢者の心身機能の低下や意欲低下を招く原因になります。また、状況によっては虐待にもなりかねません。地域の見守りネットワークに登録したり、近所のよく行くお店や立ち寄りそうな場所に事前に説明し、必要に応じて連絡してもらえるよう伝えられると良いでしょう。
いずれにしても、身内が万引きで周囲に迷惑をかけたということは、家族にとっては大きなショックとストレスになります。「私の家族が物をとってしまうかもしれません」と言うことは、恥ずかしさも起こり相談しにくいものです。しかし、認知症が生活力や判断力に影響を与えている場合もあり、そうであれば、誰もが認知症になる可能性があることから、決してこの問題は他人事ではありません。
最近では、コンビニやスーパーでも認知症サポーター養成講座を受講し、理解を深めている店舗が増えています。相談は、お住まいの地域の地域包括支援センターや、認知症の人と家族の会 電話相談などで具体的な対応を相談できます。また、逮捕された場合には、当番弁護士制度の利用をご確認ください。