ヤスデ駆除は“えん罪”か!?見た目の悪さが「罪」駆除依頼者は新築住人が圧倒的

北村 泰介 北村 泰介
 アジサイが美しい季節ですが…ヤスデは落ち葉の中にも生息しています
 アジサイが美しい季節ですが…ヤスデは落ち葉の中にも生息しています

 梅雨の季節がやって来た。ヤスデが大量発生する時期である。ヤフー検索の調べによると、今の時期にその関連ワードを検索するユーザーが増えるという。人間に害を及ぼさないヤスデがなぜ“害虫”扱いされるのか。その原因となる人間心理を踏まえ、駆除の方法や共存の道を探った。

 ヤスデは節足動物で日本には200種類以上が生息しているといわれる。体長は平均的なサイズで2センチくらい、幅は2~3ミリと細長い。触角と相当な数の足がうごめいている。

 ムカデのように人間を刺したりはしないのだが、見た目がよくないことから「不快害虫」とされている。この場合の「害」とは、「人間の気分を“害”する」の「害」である。踏まれると臭いのきつい液を分泌し、それも不快感につながる。

 ムカデが肉食性なのに対し、ヤスデは腐植食性。石の下や朽ちた木や落ち葉の中に生息し、土壌の有機物や真菌類を食べて分解。排せつ物は栄養分となる。6月が成虫になるピーク。梅雨期で地中の水分が増えると、溺れないように家の外壁を登って室内に侵入(※ヤスデにとっては避難)することも。狭い隙間から入ってくる。

 見た目が耐えられない人は「駆除」となる。市販の殺虫剤スプレーで直接噴射する。また、事前に侵入経路となる外壁などに液剤をかけておく。予防策としては庭の落ち葉や腐った木などヤスデの“好物”をあらかじめ取り除いておくことだ。

 それでも不安な人は業者に頼む方が合理的だ。害虫駆除を自社施行する「想和ホールディングス」(本社・千葉県)の担当者は「薬も慣れてくると効かなくなる傾向にある。市販の薬を何回もまくより、業者に床を開けて根元から対処してもらうなど、1回で済ませた方が安くつくと思います」と説明した。

 では、どのような人がヤスデ駆除を依頼する傾向にあるのだろうか。同社担当者は「圧倒的に多いのが築10年未満の新築で、約9割を占めます。それまでアパートやマンションに住まれていて『あまり見たことのない虫が出てきた』ということで頼まれる傾向にあります」と指摘した。

 一方、別の業者は「ムカデは人を刺すので駆除の注文も多いのですが、ヤスデに関しては問い合わせもあまりない。『お金がかかるなら、頼むこともない』ということだと思います」と明かした。

 確かに、無害なのに見た目の気味悪さで駆除されるのは“えん罪”的だ。SNSでは、ヤスデを自らの腕にはわせる動画をアップしている愛好家もいた。そこまでのマニアでなくとも、一つの選択肢として、ヤスデを室内で見つけたら、そっとティッシュなどにくるんで、窓から外にポイッと“キャッチ&リリース”。そんな共存の道があってもいい。

 とはいえ、室内に大量発生すれば根絶したくなるのは人間心理として否定できない。そんな時は業者に相談して根本的な対策を検討し、たまに登場するだけならキャッチ&リリース。その使い分けで梅雨を乗り切りたい。

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