伐採された街路樹がいすに?あの豪華列車のいす職人が込めた思い

広畑 千春 広畑 千春
シェービングホースに乗って木を削る迎山直樹さん。右はプロジェクトで作るいすの試作品=兵庫県佐用町、テノン合同会社
シェービングホースに乗って木を削る迎山直樹さん。右はプロジェクトで作るいすの試作品=兵庫県佐用町、テノン合同会社

 道路わきに植えられたたくさんの街路樹。伸びすぎるなどして伐採された木はたいていの場合、チップにされ廃棄処分されるという。だがJR九州の「ななつ星」や伊豆急行の「ザ・ロイヤルエクスプレス」といった豪華観光列車に採用されるなど今注目のいす職人、迎山直樹さん(57)=兵庫県佐用町=は、その捨てられる枝を使ったいすづくりに挑む。その思いを聞いた。

 -なぜ街路樹でいすを?

 「こういうやり方を『グリーンウッドワーク』と言うんですが、もともと、昔の人は木で何かを作るとき、まず山小屋を建て、切ってきた木を加工をしていたんです。その木は乾燥していないので時間が経つと縮んでしまうんですが、当時はその性質をうまく利用して木を組んでいた。今は変形や割れを防ぐためにボイラーなどで乾かした『乾燥材』を主に使い、原料の木材も米国、中国、ロシアなど外国産が中心なんですが、家具を作るのに莫大なエネルギーを使っているというジレンマを常に感じていました。でも、本当はすぐ身近に、使えるはずの木があるんですよね」

 -伐採された街路樹はゴミになるんですか?

 「特に自治体が管理しているものは、営利活動になるので売ることができない場合が多いんです。だからたいていゴミとして処理される。例えば伐採された公園の木を地元の人が欲しいと言っても、もらえないことが多いんです。民有林でも間伐材を利用したくても採算が合わず、放置されているケースは少なくありません」

 -2014年には広島県で街路樹の倒木による死亡事故が起きるなど、全国的に古い街路樹が問題になっています。

 「そうなんです。でも、ただ燃やしてしまうのはCO2を排出するだけだし、何よりもったいない。神戸市では『シェアウッズ』という会社が市と連携して試験的に伐採後の利活用を模索しています。そこで、27人の職人仲間と一緒に、その木材を多くの人に削ってもらい、15本の木で1脚のいすを作るプロジェクトを企画しました。昔の人が使っていた『シェービングホース(削り馬)』に乗って、いびつなものから日常に使えるものを作り出す。シュッと音を立てて木が削れていく、その楽しさを感じてもらいたいですね。もちろん、いすの座り心地や強度も妥協するつもりはありませんよ」

 プロジェクトは4月19~21日、神戸市中央区の神戸デザインクリエイティブセンター(KIITO)で開催し、参加は無料。3日間で30脚を作るといい、クラウドファンディングの支援者に届けられるという。

▼イベントの詳細、参加予約はhttp://wechair.strikingly.com/ クラウドファンディングサイトはhttps://www.makuake.com/project/wechair/

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