同時に北村弁護士は刑法において「違法性阻却事由」という考え方があることを指摘。犯罪構成要件に該当する行為があっても例外的に違法性が否定されることが認められているもので、例えば人を殺しても正当防衛が認められれば違法ではなくなり、犯罪も成立しない。本件の場合、松居が指摘した一連の事実が(1)主要部分において真実であり、または真実と信じるにつき相当な理由があり、(2)その事実が公共の利害に関する事実で、(3)その目的が公益目的であれば違法性がないが、松居が主張していることは公共の利害とは関係のない極めてプライベートなものであるため、これにも当たらない。以上のことから、捜査当局は船越側が刑事告訴すれば受理するとみられる。
その後は、捜査当局が松居を事情聴取することも十分に考えられる。聴取の過程で捜査当局は松居に「違法行為を重ねるべきではない」などと諭し、松居が「二度としない」と固く約束するのであれば、船越側が告訴を取り下げることも考えられる。名誉毀損罪は親告罪であることから、取り下げれば捜査も終わり、問題は終結する。双方にとって比較的ダメージの少ない決着と思われる。
しかし、松居が断固として反省しなければ事態は変わる。刑事事件の捜査対象であれば、一般的に当局が証拠隠滅の恐れや逃亡の恐れがあると判断すれば逮捕、勾留もあり得る。その後は起訴をへて、法廷で決着を見ることになる。初犯で反省していれば執行猶予の可能性は高いが、「自分は悪くない」「これからも同じことをする」と言い張れば実刑の可能性もあり得るという。