大阪にある阪急宝塚線・石橋駅前の雑多な商店街を通り抜けた閑静な住宅街に、小さなカフェがある。特製のチョコレートとコーヒーが楽しめる「Marc de Iguchido」だ。静かな街並みにぴったりな、落ち着いた雰囲気が印象的。柔らかなハープのBGMに身を任せ、カカオの香りに包まれながら、ゆったりと味わい深い時間を堪能できる。
この店の目玉は、手間暇かけて丁寧に作られたチョコレートだ。生のカカオを自家焙煎し、一つ一つの殻を手作業で剥く。「チョコレートの味で、少しでも贅沢な気分になってもらえたら」と話すのは、店主の吉松絵都子さん。「ネット販売では、奄美大島からも注文が来るんですよ」
コーヒーは、4種のスペシャルティをブレンドした「まーるブレンド」が定番。酸味が程よく、誰もが心地よく味わうことができる。「季節や時間を問わず、多くの人が飲みやすいものを」と吉松さんの思い入れも強い。
4年前に店を開業。それ以前は、ライターとして主に店舗を取材してきたという。「ライター時代は、紙媒体で『伝える』ということにやりがいを感じていました。だけど、『伝える』ためのリアルな空間を作ってみたかったんです」。和やかな雰囲気と美味しいチョコレートに多くの人が魅せられ、根強くファンがついた。
カフェで開催されているワークショップは、毎回好評だ。これまで40回以上開催してきた「カカオ豆からチョコレートを作るワークショップ」では、「開催するたびに、参加者の皆さんがお友達になっている」という。「このワークショップは、カカオ豆に関するうんちくを学ぶ、というものではありません。カカオの香りを、五感で感じてもらいたいと思っています」。
店を開いて最も実感したのは「ご縁の大切さだ」と笑う吉松さん。「大事なイベントの前日には必ず、パワースポットとしてここに来てくださる方もいるんです」とうれしそうに話す。