「メモする」だけで治った逆流性食道炎

町医者の医療・健康コラム

谷光 利昭 谷光 利昭
鮮やかな新緑…いい季節です
鮮やかな新緑…いい季節です

 こんな話があります。以前、70代の女性が逆流性食道炎を患っていました。まず食事面をチェックしたのですが、患者さんに食べたものを聞いていると、こちらの言うことは守っている。それなのに一向に改善しない。おかしいなぁ…、そこで私はある提案をしてみました。

 「食事を摂ったら何を食べたか必ずメモしてね」

 患者さんはややいぶかしげでしたが、その後、パン一切れ、チョコ一かけらまで詳細にメモをつけてくれました。すると、ほぼそれだけで、悩まれていた逆流性食道炎が治ったのです。実は“女性のはじらい”が原因でした。あれも食べた、これも食べたなんて、やはり男性に面と向かって言いにくいのです。つまり、ごまかしていた。不思議なことに、メモをするという行為に転じると、なかなか「ウソ」は書けないものです。それは日々の節制にもつながり、その人の持っている治癒能力を引き出すことができたというわけです。

 難病の大きな手術などに比べたら“小さい話”かもしれません。しかし、ただメモを取るだけでその患者さんは外科的治療もせず、さらにきつい薬も飲まずに済んだわけですから、治療としては大成功です。

 病院に来られる人の症状や状況は千差万別です。患者さんが病室に入ってきたときから目をそらさず、しっかり耳を使って、患部を触診する。医者である限り、このローテーションを極めていきたいと、私は思っています。

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