医学部で学んだ知識を病気予防や適切な受診に役立ててもらおうと、滋賀医科大(大津市)で医師を志す粟岡里菜さん(25)=滋賀県草津市=が「医学生タレント」として活動している。医学知識を分かりやすく発信することで「医療を身近に感じてもらい、気軽に病院に行くきっかけをつくりたい」と話す。
「『電子たばこだから大丈夫』とかよく聞くでしょ。んなことないよ~」
5月中旬、自身が出演するコミュニティーFM「えふえむ草津」の番組で電子たばこや加熱式たばこを特集した。紙巻きより害が少ないと言われる一方、本数が増え、無自覚に深く吸い込むリスクがあると指摘。「ホントに駄目なんです。吸わないに越したことはない」と呼びかけた。
現役医学生タレントの「診察室」と題したコーナーに出演中。歯周病と糖尿病の関係や、熱中症対策としてのスポーツドリンクの効果などを紹介した。いずれも自ら題材を選び、時には大学教授に見解を尋ねた上で発信しているという。
奈良市出身。大学1年で学内のミスコンで1位になり芸能活動を始めた。当初はバイクメーカーやモーターショーのイメージガールを務め「医学生モデル」と名乗っていた。
大学で専門科目を学び、実習で医療現場にも足を運ぶ中、芸能活動を通じて触れた「社会」と医療界との間の溝を感じるようになった。医師にとって当たり前の知識や前提が患者に伝わっていなかったり、治療法や投薬について患者側が疑問を抱えても聞きづらかったりと、意思疎通の面で課題を感じた。
この現状を「医療現場側から分かりやすく発信する姿勢こそが大切」と捉え、2年ほど前から「医学生タレント」と改めた。子宮頸(けい)がんの啓発イベントへの出演や、聴診器をテーマにしたイベントの企画に力を入れる。
医師を志す原点となったのは高校生1年の春の体験だ。「病院嫌い」だった祖父が突然吐血して亡くなった。アナウンサー志望だったが、「病院嫌いをなくしたい」と強く思うようになった。
現在は医学科の6年生で、来年2月に医師の国家試験を控える。形成外科医を志望し「茂木健一郎さんの医者版」のような、分かりやすく情報を発信できる医師を目指す。「医学生の立場は市民と専門家の間。この感覚を大事にしながら医療の世界と一般の社会を行き来し、医療の知識を分かりやすく伝えていきたい」と語る。